出版社内容情報
日常の風景は建築の手がかりになり得るか。建築家・乾久美子が半年かけて追いかけた、ささやかで生き生きとした公共空間の記録。
内容説明
今、人はどのような場所を求めているのだろう。18,000枚の写真から導き出された、150の気づき。
目次
並び方
スケール
そっとおいてみると
集まり方
散らばり方
内と外
境界
見せ方
屋根
架ける〔ほか〕
著者等紹介
乾久美子[イヌイクミコ]
1969年大阪府生まれ。1992年東京藝術大学美術学部建築科卒業、1996年イエール大学大学院建築学部修了。1996~2000年青木淳建築計画事務所勤務を経て、2000年乾久美子建築設計事務所を設立。2000~2001年東京藝術大学美術学部建築科常勤助手、2011年より東京藝術大学美術学部建築科准教授に就任。主な作品に「アパートメント1」(2007年竣工/2008年新建築賞)、「フラワーショップH」(2009年竣工/2010年日本建築士会連合会賞優秀賞、2010年グッドデザイン金賞、2011年JIA新人賞、2012年BCS賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mijas
47
何気ない風景でも誰かにとって優しい場所かもしれない。全ての風景に意味があるというコンセプトで1800枚の写真が150に分類されているのだが、それぞれのユニット名が面白い。「ひとりでがんばる」郵便ポストの写真。田舎の道にぽつんと寂しげに佇んでいるポストが、このネーミングがあることで頼もしく見えてしまう。まさに視覚と知覚のやりとり。「風景が投げかける微笑み」を感じながらページをめくった。気に入ったのは「にぎやかし」と「きわふわ」。擬人化や隠喩を用いて対象を捉えるとき、日本語が能力を発揮するのかもしれない。2016/01/13
Kenta Sasa
2
本自体の質感、ページの開き具合、写真の量、タイトルや説明文の雰囲気、全てがすごく良かったです! まえがきに書いているパタンの抽出プロセスなどもグッときました。 単純に中身の写真もすごく惹かれるものが多く、「なんか良いなぁ…」と味わえるものでした! 私はパタン名を手で隠して写真を眺め、自分なりにパタン名を作り出して答え合わせをするという楽しみ方をしましたが、それもすごく面白かったです。 良さが分からない写真がなかったわけではないですが、買ってよかったと思える本でした!2021/09/14
さゆう
1
本書を通じて「自分の好きな風景」について考えていた。まず奥行があること。すれ違うのに苦労しないくらいの道幅の狭さ、またはフレームで切り取られたような風景がいい。勾配があるとなおいい。…などと考えているうちに、ある寺院から眺めた風景が浮かんだ。両側に墓石が並ぶ階段を登り、振り返る。すると遠く市内を埋め尽くす高層建築は豆粒ほどで、墓石との境界は無く、一面墓場のように錯覚した。当時すごく圧倒され感動すら覚えた。振り返る動作と墓石が過去を強く意識させ、その街の歴史の重厚さを一目に味わった贅沢な時間だった。2022/09/19
コト
1
日常の風景の中でふといいなと思った光景を集め、なぜいいと感じるのかを考え細かなユニットごとに分類していく。写真はどれもユニークであり気持ちのよさそうな空間が生まれていたり、人の温かさを感じさせるようなものだ。最後の学生たちの研究を通して考えたことにはっとさせられた。何気ない風景に変化を生む個人の経験や想像を「トーン」と表現したり、現代の都市が豊かさを失っている理由の一つを「重なりとずれ」から言及したり。感覚を切り口としている建築本なので、同じく感覚から設計を始めがちな私にはとても勉強になった一冊です。2018/10/12
shrzr
1
まさに「場所の図鑑」。何でもないけどふと心に残る、そんな場所に魅力的な名前をつけて分類。まちづくりより少し等身大の場所づくりのヒント。2014/06/10