内容説明
厳寒の北極圏―。そこに育まれた類まれな固有の文化。数千年に及ぶ伝統に深く根差しながら、イヌイット美術は、今に生きる芸術としての力強い表現力を具えている。創造的な伝統のありようを示している。1950年代、広大な雪と氷の大地に、夢多きひとりの青年が降り立った。その地に暮らし、彼は、イヌイットの彫刻に心酔していく。そして、身を挺して、それを世界に紹介していこうと決心する。後年、彼は、イヌイットの世界に、版画制作の技法さえ持ち込んだ。これは…見知らぬ土地の人々との、出逢いと深い友情の物語。真実の愛と冒険の物語。極北の地に新しい文化の地平をきり開いた、ひとりの男の悲喜こもごもの人生模様。そして同時に、時代に翻弄される民族の、内側からの歴史でもある。
目次
北へ
イヌクジュアック―1948年
相棒の妻
セイウチ猟
たちまち売り切れ
歴史的展開
グレイト・ホェール・リヴァー
ポヴンニトゥック―1950年
縫い目と時間
アクリヴィック〔ほか〕