内容説明
日本で初めてチベット潜入に挑んだ僧侶、能海寛。能海唯一の著作『世界に於ける仏教徒』全篇の口語訳を通して、明治という時代の本質が浮かび上がる。宗教の過去・現在・未来をグローカルに見通す野心作。
目次
第1部 能海寛の風景―山陰からチベットへ(仏教と欧米知識人;能海寛と『世界に於ける仏教徒』;チベット仏教憧憬―白い金色の浄土;古都京都の近代化をめぐる仏教とキリスト教)
第2部 能海寛の思想―『世界に於ける仏教徒』を読む(『世界に於ける仏教徒』口語訳;キリスト教批判―宇内一統宗教の構想;批評としての大内青巒序;仏教と国粋―明治維新と能海寛)
第3部 仏教の土着と宇宙―遺産から自然まで(東大寺頭塔の復元からみた宝塔の起源―チベット仏教の伽藍配置との比較を含めて;大雲院宝塔厨子と徳川将軍家墓所;浄土真宗、近江から因伯へ―尾崎家仏間と安楽寺;「賽の河原」の風景―摩尼山地蔵堂の考証と復元;居住地の形成と宗教―マレーシア移民社会の事例;仏ほっとけ―車寅次郎と御前様、そしてひとの生き死に;仏教とマーケティング;般若心経と現代科学の宇宙観;業・廻向・菩薩・輪廻―仏教主要教義問の自家撞着)