内容説明
自然を理解するにはさまざまな解釈があり得る。その解釈には、その時々の社会や政治の情勢、さまざまな集団相互の権力や利害などの要素が絡むこともある。きわめて少人数の関係者により、熟議も経ずして、発電所敷地内のマイナーな破砕帯が、一方的に活断層と認定されている。横暴な話の進め方であり、暴走を超えた行為である。
目次
第1章 活断層と地震の種類などに関する予備知識(活断層とはいったい何なのか;地震にはどんな種類があるか;地震のエネルギーとマグニチュード;活断層の調査はどう行うのか)
第2章 地震に関する学問はいかに発展してきたか(明治初頭に遡る地震学や地質学の始まり;20世紀の後半に動き始めた活断層学;実務を重視して発展してきた耐震工学;原子力発電所が抱える耐震リスクと設計裕度)
第3章 発電所敷地内破砕帯を巡る論議を整理する(日本の主要な活断層帯と原子力発電所の位置;発電所敷地内破砕帯に関する有識者会合の議論)
第4章 活断層騒動に潜む学術・運営の問題は何か(活断層に係る専門分野の歴史の不揃いと蓄積の違い;理学者の自然観と工学者の技術観の間に横たわる溝;学術を政策の反省させるプロセスの未熟さと不手際;有識者会合に対して噴出する批判と考えうる改善策)
第5章 原子力の規制行政には何が求められるのか(過去の過酷事故に対するわが国の規制行政の対応;シビアアクシデントだけを見た硬直的な多重防護;原子力行政全般の中での規制行政のバランス感覚;クライシス・ルーリング(危機統治)と規制行政)
著者等紹介
青柳榮[アオヤギサカエ]
1952年生まれ。埼玉大学理工学部卒業、同大学院工学系研究科修士課程修了。1979年財団法人電力中央研究所に入所。使用済燃料輸送容器、高レベル廃棄物貯蔵施設、高速増殖炉実証炉をはじめ原子力の設備・施設の構造問題、耐震問題などに従事。社会経済研究所上席研究員、企画、総務の業務を経て広報グループマネージャー(参事)を歴任。現在、同研究所研究アドバイザー。博士(工学)。専門は応用弾性学、現代技術論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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