内容説明
何世紀にもわたって外の世界と隔絶されて、独自の精神文化を築きあげてきた孤高の国チベット。現世における精神的最高指導者であるダライ・ラマを中心に、あらゆる問題を自らの手で解決してきた人々が、なぜかくのごとき悲劇に見舞われたのか?ダライ・ラマをはじめ、400人以上のチベット人の生の声と膨大な資料を駆使し、チベットの根底を流れる仏教精神を浮き彫りにしながら、中国の侵略から今日に至る歴史の流れを鮮烈に描き出した長編ドキュメンタリー。
目次
1 崩壊前夜(1933‐1950)
2 占領(1950‐1959)
3 亡命(1959‐1960)
4 再建(1960‐1974)
5 闘い(1959‐1984)
6 チベット医学
7 巡礼
8 守護の輪
9 とらわれたチベット(1959‐1965)
10 長い夜(1966‐1977)
11 チベットに還る(1977‐1984)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アメヲトコ
1
1932年から1983年までの半世紀のチベットの苦難とダライ・ラマ14世の半生を追ったドキュメント。インタビューをもとにした構成なので、ソースの扱いに注意して読む必要がありますが、それにしても中共の侵略がいかにチベットの文化を徹底的に破壊したのかには戦慄するばかり。本書は将来への希望を持たせるかたちで閉じられますが、それから30余年にチベットで起こったことを思うと暗澹たる思いを禁じ得ません。2015/09/18
kitakama633
0
中国共産党による解放以前のチベット民衆の暮らしぶりは分からないが、中国共産党による略奪、迫害の過酷さは、本書でよく理解できた。今日でもチベット問題をニュースで見聞きすることがあるが、過去にここまでの抑圧があったとは理解できていなかった。もっとも中国共産党の指導者にとっては、自国民に対しても同様に過酷な解放政策をとっている訳けで、チベット民族を迫害しようという特別な意図はないのかもしれない。習近平を始め共産党指導者たちは、本当に共産党支配が続くことが、民衆の平均的な幸福を実現していると信じているのだろうか。2024/12/13