目次
はけみや
手をふる
なつやすみ
チョコレート
毛布
実家
ざぜん豆
卵焼き
正月の風景
じいちゃんの葬式
体温
夜伽
花と犬
見舞い
虫の知らせ
酒盛り
白いワンピース
さみしがりや
ユキヤナギ
祖父の声
微熱
二人乗り
ちゃんぽんとカツ丼
遠い記憶
再会
珈琲の種
かつての場所
凍える水
別れ
お隣さん
夕方
まなざし
雪だるま
木に登る
猫を売る
反抗期
S先生
夜市
はじめての猫
道をたどる
著者等紹介
田尻久子[タジリヒサコ]
1969年熊本県生まれ。「橙書店 オレンジ」店主。会社勤めを経て2001年、熊本市内に雑貨と喫茶の店「orange」を開業。2008年、隣の空き店舗を借り増して「橙書店」を開く。2016年より文芸誌『アルテリ』の発行・責任編集をつとめる。2017年、第39回サントリー地域文化賞受賞。著書に『猫はしっぽでしゃべる』(ナナロク社)、『みぎわに立って』(里山社)、『橙書店にて』(2020年、熊日出版文化賞/晶文社)がある
川内倫子[カワウチリンコ]
1972年滋賀県生まれ。2002年に『うたたね』『花火』で第27回木村伊兵衛写真賞受賞。2009年に第25回ICPインフィニティ・アワード芸術部門を受賞するなど、国際的にも高い評価を受け、国内外で数多くの展覧会を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
109
落ち着いた雰囲気の装幀に惹かれた本。写真とエッセイの組み合わせがとても良かった。読む間ずっとノスタルジックな思いに包まれながら、優しさと朗らかさとしなやかな強さを感じた。語られるのは著者の子どもの頃の記憶、家族との記憶。共に生きていれば様々な感情が湧く。わだかまりも譲れないものもあれば、大人になって理解できるものもある。途中、何度も読む手を止めて自分も思い出の旅へ、内容は重ならないのに。そして写真は記憶を色づかせる。あとがきにある記憶の不思議な連鎖に合点。この本は記憶にいだかれるためのもの、そう思えた。2022/06/16
アキ
96
熊本の橙書店には一度しか行ったことがない。道がわからず、二階の店の窓から顔を出して手を振ってくれた思い出が甦る。この文章を読みながら、著者の記憶の中の世界を自分の記憶と重ねて漂うように読み終えた。川内倫子の文章に合わせた写真がとても良い。「お隣さん」で落ち椿を食べ物に見立てて遊んでいた記憶と、子どもが持つ椿の花の写真の取り合わせがいい。お葬式や家族の最期の思い出が多い。読みながら父の葬式を思い出した。再び来熊(らいゆう)する時、この本を持っていこう。前著「橙書店にて」と同様、サインとひと言書いてもらおう。2022/05/03
どんぐり
80
熊本で橙書店を営む田尻久子と写真家の川内倫子による4頁のエッセイ40篇と見開きの写真40点。『みぎわに立って』のエッセイにもある捨て猫や生活雑感に加えて、母親の出奔、祖父母との同居、弟の家出など在りし日の個人史的な面も綴っている。これが川内倫子の日常生活を切り取ったような淡い写真がピッタリと合う。東京オペラシティアートギャラリーで開催の川内の写真展のときに見つけた1冊。2022/11/30
tetsubun1000mg
29
吉本由美さんと共著エッセイ「熊本かわりばんこ」を読んで以来田尻さんの本は4冊目となった。 静謐で寂寥感をも感じるエッセイが持ち味のようなのだが、本作は自分自身の幼少期に沈みこんでからその時の気持ちを思い出していくような感じ。 同時に入っている川内倫子の写真が文章に合っていてまるで絵画のような印象を受けた。 エッセイの文章と写真がお互いに融合したタイプの本で、ゆっくりとページを捲ったので1週間ぐらいかけて読んでしまった。 今月初めに橙書店を初めて訪れた記念に買った「みぎわに立って」をこれから読んでみよう。2024/03/20
ほし
14
橙書店の田尻久子さんによる、家族の死や幼少期の記憶をモチーフとしたエッセイと、川内倫子さんによる写真からなる写文集。田尻さんの境遇や思い出は自分とは全く違う筈なのに、読んでいると自分の記憶の蓋も開けていくような感覚になるのが不思議です。誰しもに共通するような、人間のままならなさと可笑しみが描かれているからでしょうか。川内さんの写真は、そのような田尻さんの文章に正面から応えているような作品で、どれも美しく素敵でした。静かな雨の日にゆっくりと読みたい一冊です。2022/07/27