内容説明
連載の三回めが東日本大震災の発災からわずか十一日後の文章となった。ここから『小説のデーモンたち』は、一人の作家の自滅と再生の物語となってしまう。そう、物語だ。驚いてしまうことに。僕は、この創作論『小説のデーモンたち』を月々書きつづけることで、ある一人の“作家”を観察するはめになった。その“作家”とは僕である。結果として、この本は「2011年1月から2013年7月を生きた、ある一人の“作家”のクロニクル」に結実した。―著者。
著者等紹介
古川日出男[フルカワヒデオ]
1966年福島県生まれ。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さっとる◎
40
作家が書いた「創作論」を手に取る時、人はそこに何を期待するだろう?福島県出身の古川日出男が書く創作論は、書き始めた直後に東北の震災に見舞われ、あまりにリアルで真摯な自滅と再生の物語となった。この本に「創作する作家」が書かれていることは間違いがない。しかしそれは「一般的な創作論」に敷衍すること恐らく不可能で、だからこそ彼にしか書けない作品が生まれ、私はそこに惹き付けられる。「物語」が「現実」を侵蝕し、「世間的な死の状態」で書かれた作品の凄味を私は体感した。彼が創り出す芸術と同じ時代に在ることを幸福に思う。2017/04/12
marco
22
古川日出男流の創作論。連載中に何回分かを読み独特の視点と文体に脅威を覚えたが、全体を読み通すと、その思いはさらに強まった。圧巻は三部構成の最終章。創作論をフィクション化し、著者自身が11の小説のデーモンたちに立ち向かう。古川さんはどこに行こうとしているのか? その先が見えた気がした。2014/02/16
gu
4
それ自体が小説である小説論、とは例えば保坂和志の『小説の自由』があるが、この作品が決定的に違うのは現在進行形で小説を生成することのみを語っているところだ。著者の小説に内在する(過剰な)自己言及性と、あらゆる文章を虚構化せずにはおれない性質がぶつかり合った地点、という印象。2013/12/24
ユーコ
4
書くことにとり憑かれた古川日出男という「小説の魔物」。まぁ、なんと赤裸々な。そして真摯な。2013/12/22
緑虫
3
いちおう創作「論」と謳われてはいるものの、文は論ばっておらず、むしろフィクションめいている。作中で古川日出男が手なずけた小説のデーモンは「瞬発力」「無意識」「心のぶれ」、実際の文章も頭で書かれたというよりフィジカルな手触りがありありと残ったもので生命感に溢れている。小説と同様、思わず憧れてしまう文体。アイドルです。2014/01/21