出版社内容情報
友人に、恋人に、家族に語った中也の肉声
人間中原中也の姿が見える
中也の詩集や研究書は数多く出版されていますが、
その「肉声」に焦点を絞った本はありません。
生誕100周年記念企画として、稀代の詩人中原中也が、
友人や恋人、家族などに語った言葉を集めました。
日記や手紙などにも目を通し、心に染みる名言をピックアップ。
この1冊で人間中原中也が浮かび上がります。
[目次]
・友人の章
・恋人の章
・幼少の章
・芸術の章
・文也の章
・生活の章
・母親の章
・名詩十選
・中也年表
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
バレンタインデーが無縁になって数年経過した寺
66
中原中也の名言集に10篇の詩を添えた本。名言というより、記憶の中の中也の発言集。昔、緒形拳が檀一雄を演じた映画『火宅の人』で、真田広之演じる中也が岡田裕介演じる太宰治に「太宰!お前は何の花が好きなんだよ!言ってみろよ!」と絡んで檀一雄に殴り飛ばされるシーンがあった。以来私は中也をいかにも無頼漢の悪しき文学青年だと認識した。それも間違いではない。しかし可愛い我が子を喪い、精神に変調をきたし始めた中也の言葉を見て、可哀想でならなかった。泣いてしまった。中原中也の事が好きになった。同情は必ずしも悪い事ではない。2018/10/22
双海(ふたみ)
36
再読。実は3度目。いつも泣きそうになる。中也の慟哭、わかる気がする。私も詩を書いて生きていけたら、と思う。然るに、才もなければ、覚悟もなく、あとに残るは自己嫌悪のみ。文学に己(おの)が命を懸ける覚悟・・・そういえば、流行りの作家で自裁する者が出ないことを不思議に思います。「子供も世間も寝てからが俺の世界だ」・・・そうだよ、月夜はあんただけのものだ、中也。2015/06/25
まゆまゆ
29
この間読んだ、「肉声 太宰治」の中也バージョン。繊細な詩とは真逆な、酒乱でひねくれ者という一面がありながら、実は寂しがり屋。友人への手紙の「君に会いたい」がいじらしかったです。息子の文也君がらみの言葉が好き。本当に最愛の息子だったんですね… 初対面の太宰さんにからんだ言葉がやはり衝撃(笑) 「青鯖が空に…以下略」 詩人って独特な感性で人にからみますね(笑) 中也自身も、「汚れたゴムまりを濡れ雑巾でひと拭きしたような顔」って言われたことあるらしいし。そう言ったのもまた詩人です(笑)2016/04/22
いしかわ
25
恥ずかしながら学校で習った程度の認識で、中原中也という人物のことを殆どと言っていいほど知らずにいた。ほぼまっさらの状態で読む、中原中也の詩は不思議な程に胸にきた。たった一言の名言でも、中原中也という人間の深みが見えるようだった。詩に生き、愛に生き、迷わず進んだ彼は 今になっても尚 人々に言葉を届け続けている。2013/05/04
G-dark
23
中原中也が周囲の人々に語った名言(迷言?)とそれにまつわるエピソード、詩、そして短すぎる生涯の年表をまとめた本。わたしは以前から「ひょっとして中原中也ってツンデレ気質?」と思っていたのですが、この本を読んでそれは確信に変わりました。たとえば、中也が太宰治と初めて会った時に言ったという、「何だ、おめえは。青鯖が空に浮んだような顔をしやがって。全体、おめえは何の花が好きだい?」(P18から引用)という言葉!突っかかったと思った次の瞬間にはロマンチックなことを聞いています。何この流れるようなツンデレ!2022/11/23