内容説明
映画をより詳しく理解しうると同時に、臨床心理学の中核的な概念の一つである「トラウマ」をしっかり理解するにもきわめて適切な手引きとなっている。
目次
第1章 トラウマの呪縛『質屋』―フラッシュバックの衝撃
第2章 虐待を受けた子ども『愛を乞うひと』―母なる世界の再発見
第3章 大惨事の非日常性『フィアレス』―臨死体験と宗教性
第4章 失われた記憶『心の旅路』―解離の解消過程
第5章 女性への暴力『噂の女』―被害の普遍的構造
第6章 閉ざされた内なる宇宙『秘密の花園』―見捨てられた子どもの再生
第7章 トラウマの反復と深層『めまい』―死の不安と愛の可能性
第8章 見えないトラウマ『ユリイカ(EUREKA)』―トラウマ領域からの脱出
第9章 呪縛からの解放『バッファロー’66』―真実の認識と直面
著者等紹介
森茂起[モリシゲユキ]
1955年生まれ。京都大学教育学部大学院博士課程修了。博士(教育学)。現在、甲南大学文学部人間科学科教授
森年恵[モリトシエ]
ブリストル大学大学院修士課程修了(女性学)。レディング大学大学院修士課程修了(映画学)。現在、同大学院博士課程在学
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
1
面白かった。映画におけるトラウマをテーマにして(決して、観客にトラウマを与える映画は何かという話ではない)古今東西様々な映画が紹介されているので映画ガイドブック的な側面もあると思う。しかし、トラウマへの接近の仕方は思った以上にたくさんあって、例えば、「質屋」のフラッシュバックの技法から、「ユリイカ」の語らない(恐らく、表象不可能なトラウマを描くとすればこの方法しか本来はありえないが)や、「傷は同じ傷によってしか癒えない(しかし、最悪の結末で!)」というヒッチコックの「めまい」など。2017/05/07
林 一歩
0
期待はずれ。2011/07/23
nobu
0
PTSDを始めとしたトラウマに関する知識は増えてきたが、それが実際にどのような臨床事象として現れるか、またどのような心の動きをするかが書かれた文章にはあまり出会ったことがない。トラウマを描いた映画を丹念に説明することでトラウマの内実を描くことが出来る。筆者の筆力もあるかもしれないが、文章だけで映画の中身や奥深さまで見た気になってしまった。ただ実際にその映画を見ると感似ることは違うのかもしれないだろうが。いずれにせよ映画を題材としたトラウマ理解には格好の書籍と思った。2020/07/04