内容説明
地球のジャーナリスト、リン・ジャクスンに届いた手紙は、ジャムと結託してFAFを支配したというロンバート大佐からの、人類に対する宣戦布告だった。ついに開始されたジャムの総攻撃のなか、FAFと特殊戦、そして深井零と雪風を待ち受けていたのは、人間の認識、主観そのものが通用しない苛酷な現実だった―。『戦闘妖精・雪風(改)』『グッドラック』に続く、著者のライフワークたる傑作シリーズ、待望の第3作。
著者等紹介
神林長平[カンバヤシチョウヘイ]
1953年新潟県生まれ。1979年、第5回ハヤカワ・SFコンテスト佳作入選作「狐と踊れ」で作家デビュー。第1長篇『あなたの魂に安らぎあれ』以来、独自の世界観をもとに「言葉」「機械」などのテーマを重層的に絡み合わせた作品を多数発表、SFファンの圧倒的な支持を受けている。『敵は海賊・海賊版』、『グッドラック戦闘妖精・雪風』などの長短篇で、星雲賞を数多く受賞(以上、早川書房刊)。1995年、『言壼』で第16回日本SF大賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
適当に購入した物本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
扉のこちら側
80
初読。2015年1223冊め。敵か味方かの判別もつかないとか現在地がどこかもわからないとかの緊迫した場面でも、人間とは何かとかなんかの哲学的話が延々と続くシュールさ。でもそれがこの戦争の真意を知るために必要であり、最後の展開に不可欠だったと信じられる安定のシリーズ。この第三部の結末もよかった。続編求ム。2015/12/19
おたま
62
シリーズ前2作を読んできて、この本でいよいよ未知の異星体ジャムとFAFとの全面的な戦闘となる。のだけれど、物語は決して華々しい「戦闘場面」とは一切無縁に続く。むしろ混沌とした混濁した世界が現出する。それは、ジャムが惹起したものではあろうが、特殊戦関係者の各自の意識と、ジャムに寝返ったロンバート大佐の意識と、さらに雪風の意識(?)、ジャムの世界観等が混ざり合う世界での認識論的な「闘い」となっている。人間の現実世界である、「今」や「ここ」が解体され、むき出しの存在論的な「よりリアルな現実」が描かれていく。2021/06/06
詩 音像(utaotozo)
54
複数視点による一人称語り連作で各話ごと、また各話の途中でリレー的に語り手が交代。それがメタ的伏線になって、個人が物語を語ること自体の不思議さを照らし出し、その一人称語りさえも、雪風の采配だったのかと思わせる目眩く物語構造。この仕掛けを著者は連載開始時から考えていたのか。言葉と意識が世界の有り様を変えるのは、今まで「雪風」では控えめだったが神林節とも言える。深まる会話が見える世界を解き明かす一方で、募る閉塞感。それだけに終章の爽快感には思わず目頭が熱くなる。空中給油も第1作っぽく、メカフェチ的にグッと来る。2017/01/02
里愛乍
51
前巻で少し掴めそうな気になっていたジャムだけど、片鱗らしきものが見えれば見えるほどますます不気味さが増してきた。自分とは意識であり、意識とは言葉であり、言葉があればそこに自己があるという、ロンバート大佐と桂城少尉の会話は興味深い。もしかしてジャムとは〝言葉〟なのか?以前読んだ「言葉が人間を操作する」というやつを思い出した。自分の持つこの意識も言葉に操られているだけなのか―――戦闘機で戦う兵士のSF戦闘ものかと思って読みだしたら、いつの間にか想像もつかなかった場所に連れてこられた気分です。2015/02/04
はるを@お試しアイコン実施中
49
🌟🌟🌟🌟☆。2025年最初の読了本は神林長平の代表作。レビューに書くのは初めてだが単行本で一回、文庫本で一回そして二月に刊行される新刊を前に復習としておよそ14年振りに再読。何度読んでもレビューを書くほどには読解出来ない。でも再読の度に読み応えがあってとても面白い。普段考えていない意識や深層心理の奥底にある思いを言葉にしていく登場人物達。その描写が丁寧で自分でも考える事だな、と共感。特に普段の自分は意識下の本当の自分のメッセンジャーである、という件が印象的。2025/01/22