内容説明
「沖縄県には日本全国の米軍基地施設の75%が集中する。」「軍用地主」より。沖縄を舞台に物語を紡ぎ続ける比嘉慂が、現代を題材に描いた未収録異色作を一挙収録。基地をめぐる人々の“寓話”集。
著者等紹介
比嘉慂[ヒガススム]
1953年沖縄生まれ。1989年、第38回手塚賞(集英社)を経て1992年ビッグコミック賞(小学館)受賞を機に本格デビュー。その後、2001年より講談社「モーニング」で不定期連載された「カジムヌゥガタイ」シリーズを単行本化した『カジムヌガタイ』(講談社)で、2003年文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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厩戸皇子そっくりおじさん・寺
61
「マブイ」と聞くと、「マブイ女」だの「ハクいスケ」だのと昭和のヤンキー用語が浮かんで来るが、沖縄の言葉で「魂」の事だそうだ。この比嘉慂という漫画家は寡作で、沖縄ならではの問題意識を持った面白い漫画を丁寧に描いている(絵を見ればわかると思う)人である。まだ描いているのだろうか?。全集を出して欲しい。米軍基地があるという事は、こんな出来事があり、それにまつわる歴史がある。戦後から現代が舞台の作品集だが、ユタという霊能者が各話のポイントになっている。ちょっとした前近代が現代を救ってくれる。比嘉慂作品、お薦め。2020/09/04
たまきら
30
比嘉さんが淡々と描く沖縄、そして琉球をずっと読み続けています。自分の祖父が沖永良部の神官の家系だったせいでしょうか、琉球の風土が生んだ人と神さまの関係がとても自然に感じられる気がするからです。醜い政治、米軍基地。息苦しい状況下でも人はたくましく生きている。そして、日米どちら側にも温かい人が、心をなくした人がいる。自分はどう生きていきたい?の答えの一つを、この作家さんの淡々とした描写から学んでいます。読めてよかった。2020/12/22
きゅうり
8
沖縄の人々が昔から生きてきた土地に戦争が上陸して、米軍がやってきて、基地ができた。福島の原発事故もそうだけど、否応無く日常を奪われる理不尽さ。しかし基地があることで大量の借地料が地主に支払われ、雇用も生まれているという一面もある。(軍用地の売買は投機の対象なんだな。)漫画の中にはユタ(巫女)が度々御嶽で御願するシーンがあるけど現代でもあるんだろうか。2015/01/02
二人娘の父
7
比嘉慂(ヒガ・ススム)氏の作品で読めていなかった「マブイ」。作品を読んでみて、日本語の魂という解説はあるが、我々が考える魂とは少し違うような気もする。「落とす」という表現があるように、マブイは欠落あるいは喪失するものでもあるらしい。魂が抜けるといういい方もあるが、どちらにしても、「本来あるべきもの」という意味が強いように思う。表題作「マブイ」で初めて知った、墓荒らし。沖縄で本当にそうしたことがあったことは、非常にショックである。まだまだ自分は沖縄を知らないのだと痛感した。2021/07/14
ハイサイ
5
比嘉さんに出てくる女性はなんと目元涼しく凜としていることか。何度も読み返してしまう。それにしても日本の多くの政治家がマブイを落としてしまったようだ。2012/05/02