感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
57
人魚、提琴、驚異の部屋…著者の持つ独特の輝きが余すところなく発揮された短編集。恐怖というよりは古城の驚異の部屋で古い収録物を見ているような読み心地がする。著者の作品は主に「三隣亡」シリーズを読んでいるのだが、こうして短編にまとめられるとそれぞれテーマが違うためかそれぞれがより一層深化しているような気がするな。白眉は何と言っても「人魚と提琴」。著者が繰り返し書いている主題だが、封じられた人魚の歌、天才的ヴァイオリニスト、燃え上がる村といった要素が渾然一体となり得も言われぬ情感を醸し出している一作であった。2025/04/10