感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kouro-hou
26
今よりずっと科学とオカルトが近かった時代、1898年の心霊探偵モノ連作集。著者は母子コンビ作家で冒険モノで人気を博したこともあり、ドイルと付き合いもあったとか。ロウ先生は頭脳明晰スポーツ万能の科学者で、科学の検知から主に屋敷や土地の今でいう地縛霊系と戦います。が、短い頁数みっちり書き込みすぎてロウ先生本人まで手が回ってません。モルグ街からの伝統"助手"がいないのもあり先生本人が空気なんですな。助手的人物が登場する最終話は面白くなりそうな気配があるだけ勿体ない。面白さというより希少性で貴重な本ではあります。2019/09/16
DEE
13
孤高の心理学者ロウが数々の奇妙な現象の謎を解き明かしていく連作短編。 そのほとんどがオカルトで終わるもの。 憑依だとか幽霊だとかなんでもありと言えばそれまでなんだけど、科学的に証明してスッキリというより霊的な雰囲気を楽しむ作品なのだろう。書かれたのが20世紀初めという時代的背景も関係しているかもしれない。 自分はわりと楽しめたけど万人受けは難しいかな。2020/06/29
fukumasagami
8
ロウはゆっくりと笑みを浮かべた。厳粛でむっつり考え込んだような顔が急に輝いた。「ぼくは、このテーマをかなり深く掘り下げてきた。ほかの科学分野は、類推によって理論的に説明する。だが、残念なことに、心霊学は未来がある科学なのに、過去の業績がない。さらに言えば、これは大昔の持っていたはずの失われた科学なのだよ。だが、現代の我々は未知の世界の門前に立っているとも言えるかもしれない。心霊科学の発展は、我々の努力にかかっている。説明困難な現象をひとつひとつ解明していくことで、次の問題の解決のステップが築かれる。」2020/03/22
timeturner
6
期待しすぎたのか拍子抜け。思わせぶりなだけで閃きが感じられない。ホームズと同時期の作品だそうで意識して似せてる部分があるのが面白いと言えないこともない。翻訳のせいか話に整合性がなく意味不明な部分が多い。誤植の多さにも閉口した。2019/08/11
qoop
6
怪奇事件を扱う探偵を主人公とした連作短編集。一編が20ページほどと短い中で、怪談として望ましいおどろおどろしい描写をしっかりと読ませる工夫が好ましい。探偵の造形は癖のない/無駄に個性的でないシンプルさでこちらも好印象。双方の対比で作品がバランス良くまとめられている。事件現場に因んだそっけない表題でほぼ統一したのは、仰々しくなくてジャンル的に珍しいかも。特筆すべき作品はないが、後続に大きな影響を与えたろうと察せられる。内容とは関係ないが、本レーベルにしてはタイプミスが多く、そこは気になった。2019/07/20