内容説明
理想のオーガズムを記録するコンテンツ。空きビルに遺された不可解な密室。謎めいた主人公・黒丸―強烈な個性で輝く、官能的な近未来ノワール!大森望編『NOVA5』に掲載され、絶賛された表題作に加え、世界観を同じくする書下し中編「密室回路」を収録。練磨された技巧で、図子慧の真骨頂を示す一冊!
著者等紹介
図子慧[ズシケイ]
1960年、愛媛県に生まれる。小説家。1986年、「クルトフォルケンの神話」で第8回コバルト大賞を受賞。87年『シンデレラの夜と昼』(集英社)を発表、以降SF、ファンタジー、ミステリーなど少女小説で多才ぶりを発揮し、さらに一般向けにも活動の場を広げる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ai
11
主人公の佇まいが魅力的だった。諦観と喪失感を持った、透明感のある存在がすてき。物語も、SF的なガジェットを放り込みつつ、ラブストーリーやミステリー要素が強く読ませる。新作が出てら、読みたい作家さんが増えた。 2019/10/25
BECHA☆
9
近未来の東京。荒川の決壊で浸水した地域が放置されている。不動産屋の立ち退き勧告の日雇いで働く黒丸が巻き込まれる表題作短編と、その後契約社員になった黒丸が活躍する「密室回路」の2本立て。要素は難しいSFの世界だけれど、読み終えて感じるのは色んな「愛」。解説が親切。WANKO、きっとそのうちお目に掛かれる気がする(!?)2019/08/30
ぶうたん
9
NOVA掲載の短編に、主人公が共通した短い長編を組み合わせたもの。基本的にはSF範疇内だが、後者は心理的な謎を組み合わせたミステリ的な作品。後者は特にガジェットに凝っている分、スッキリしない感がやや否めない。まあ、こっちの読解力の問題が大きいのだけれど。昔著作を集めていたので、コバルト時代の作品は何冊か読んでいるのだけど、完全に大人向けのは初めて読んだので良かった。2019/04/21
tetra
5
退廃した近未来の建造物・取り巻く雰囲気の描写が極まっていた。富裕層の登場人物がいる傍ら、日雇いで働く人々の描写が印象的だった。2020/04/16
渡邊利道
3
ガジェットやギミックが濃密に詰め込まれたSFミステリ連作。奥行きのある背景設定に複雑なプロット、ノワールな物語でドライなエロスとほとんどセンチメンタルな情感が味わえる。長編『アンドロギュヌスの末裔』の姉妹編的な作品で、まだまだポテンシャルがありそうなキャラと世界なのでシリーズとしてもっと読みたい。解説で作者のこれまでの作品を振り返っていて読書案内としても便利。2019/07/10