内容説明
幻想的詩人のコスモス。生類たちのアポカリプス。’02年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞『はにかみの国 石牟礼道子全詩集』大幅増補。
目次
朝
生命
夜の話
古い抒情
虹
無題
点滅
とのさまがえる
埴生の宿
いっぽん橋〔ほか〕
著者等紹介
石牟礼道子[イシムレミチコ]
1927(昭和2)年3月11日、熊本県天草郡宮河内(現天草市河浦町宮野河内)に生まれ、生後3ヶ月で水俣に移る。1943年水俣町立実務学校卒業。2学期より葦北郡田浦小学校に勤務。1947年結婚。1958年谷川雁主宰「サークル村」結成に参加。1968年水俣病対策市民会議を結成。1969年『苦海浄土―わが水俣病』(講談社)刊行。大宅壮一賞を辞退。1973年マグサイサイ賞(フィリピン)を受賞。1993年『十六夜橋』(径書房)で紫式部賞を受賞。2001年朝日賞を受賞。2003年『はにかみの国石牟礼道子全詩集』(石風社)で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。2014年、詩集『祖さまの草の邑』(思潮社)で花椿賞を受賞。2018年2月10日、死去。享年90歳(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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燃えつきた棒
38
リクエスト本を受け取りに行ったとき、新着図書のコーナーにこの本が並んでいたので、借りてきた。 石牟礼さんは、大好きな作家だ。 といっても、まだ、「苦海浄土 全三部」、「石牟礼道子全句集 泣きなが原」と本書の三作しか読んでいないが、鈍な感性しか持ち合わせていない僕は、韻文にはやや苦手意識がある。 正直、ピンと来ないことが多いのだ。2020/08/21
くまさん
24
読むことと書くことと語り伝えることに捧げられた生涯というものがある。言葉の深淵に触れる詩の燦めきと翳りというものがある。「生死のあわいにあればなつかしく候 みなみなまぼろしのえにしなり」。「地の星といわれる草の邑の遠い景色 祖さまの遺伝子共同体 あれがわたしだがこれがわたしだか 見当がつきはじめたけれども 夕べの暗い渚をよぎって いま わたしをよぎった木々の影がある ひょっとするとあれが わたしの悶え神だったかもしれない」(さびしがりやの怨霊たち)。自分自身のあり方を問い、現在を十全に生ききる糧になる本。2021/07/17
ロビン
24
『苦海浄土-わが水俣病』の著者、石牟礼道子さんの、1944年から逝去の前年である2017年までの詩を編んだ全詩集。「穴のあいた太鼓を いっしんにたたきながら 行列がとおる 蟻よ おまえが もっともなかおをしてゆくので おまえを軸に宇宙はまわり 夜もすがらの地平に 草の葉をかざして お日さまもおでましだ がんばれ」という温かな詩をはじめ、「フランソワ・ビヨンの雪」のような高い教養を感じさせる詩、水俣病や3・11に言及した詩もある。方言を使うなどどの詩もよく質感や肉感を感じさせ、高い芸術性を湛えて見事。2020/08/29
ショア
19
図書館本。魂の言葉がある、戦後のひもじい生活、不条理への言霊、地元不知火の自然情景、生きた言葉、衝撃的な表現、 同郷の言葉だからか、ふるさとで遠縁のおばあちゃんの話を聴いているような不思議な感覚。 本棚に持っておきたい一冊。 2022/04/23
watershed
2
2000年代の詩は、世界に命が生まれてから果てるまでを自由自在に描く傑作が多い。例えは次の「無題」 わたしは木の葉の一葉にすぎない 木の葉にはみんな裏がある いつも寝ているわたしは 木の葉の裏の葉脈たちと 話をしている 表の緑は陽に輝いているけれど 夜には木の葉形の黒い影となって 細い細い声を出して 浜辺の唄をうたいはじめるのだ たとえば椿の葉っぱでも 山ももの葉っぱでもよいが いったいどのくらいの物語を 秘めていることか 木の葉の語る一代叙事詩2020/07/05