出版社内容情報
危機に瀕する言語の復興―――
「危機に曝された言語」である先住民族言語のために言語学者はなにができるのか。この重い課題を背負ってシベリヤを訪ね、研究調査を続ける著者が投げかける21世紀に向けてのメッセージ。シベリヤの先住民族の社会と言語文化を描き出して、アイヌ語復興の戦略を暗示しようと意図した言語学論集。
第一章 少数者のための言語学
第一節 少数者のための言語学
――二一世紀のためのエトノス言語学のプログラム――
一 なぜエトノス言語学か
二 エトノス言語学のいくつかの原則
三 シベリアの悲劇
第二節 言語と民族についての覚え書き
一 民族にとって言語とは何か
二 言語にとって民族とは何か
第三節 北東ユーラシア地域の「危機言語」について
一 「危機言語」の研究状況
二 母語保存率
三 危機状況
四 ヤクーチア言語法
五 言語保持のための最低基準
六 復興政策立案の可能性
第二章 少数言語を守る方法
第一節 言語を守る方法について
――ルマンチユの経験から――
一 はじめに
二 ある言語政策――レト・ロマン語の場合
三 少数言語の維持と二言語使用
第二節 アルザス語の現在
一 『日曜物語』
二 フランツ君
三 アルザスの戦後
四 自 覚
五 シッケレ協会
第三節 言語の再生
――現代ヘブライ語の経験から――
一 言語消滅への嘆き
一 「ニヴフ語抱合論争」
二 抱合論論争の経緯
三 回顧からの展望
第四節 トルベツコイ「印欧人問題についての考察」
月刊言語 1999.Vol.28.no.7
長年にわたり少数民族の言語問題について深い考察を続けてきた著者の論文集。国家と言語の関係や消滅危機言語の再生プログラムを考える社会言語学的な研究と、認知的類型論という新しい類型論の流れとを融合させた「エトノス言語学」を提唱し、その一貫したテーマのもとに、これまで発表してきた諸論文に加筆してまとめ上げたものである。
取り上げられている言語はレト・ロマン語、アルザス語などのヨーロッパの諸言語、ヘブライ語から、サハ語、ニヴフ語など東シベリアの諸言語にいたるまで広範囲に及ぶが、そのどれもが著者の現地での実見に基づく深い洞察と、歴史的資料の詳細な分析に支えられた読みごたえのあるものに仕上っている。特にアルザス語についての論考は、民族のアイデンティティと言語との複雑な関係に切り込んだ至論であり、同言語についての他者の議論を凌駕している。二一世紀における言語学の新しい方向性を示す論集といえるかもしれない。(中川裕)
内容説明
「危機に曝された言語」である先住民族言語のために言語学者はなにができるのか。この重い課題を背負ってシベリヤを訪ね、研究調査を続ける著者が投げかける21世紀に向けてのメッセージ。シベリヤの先住民族の社会と言語文化を描き出して、アイヌ語復興の戦略を暗示しようと意図した言語学論集。
目次
第1章 少数者のための言語学(少数者のための言語学―二一世紀のためのエトノス言語学のプログラム;言語と民族についての覚え書き;北東ユーラシア地域の「危機言語」について)
第2章 少数言語を守る方法(言語を守る方法について―ルマンチュの経験から;アルザス語の現在;言語の再生―現代ヘブライ語の経験から ほか)
第3章 エトノスの世紀の言語学(エトノスの世紀の言語学―多民族時代の言語研究のために;古アジア諸語の用言複合構造の類型;ニヴフ語抱合論争 ほか)
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