出版社内容情報
調査重ね厳密な解釈 平易な文章で興味深く
「私の弟子であり師匠である」(故知里真志保氏)、「空前絶後のアイヌ語地名研究家」(服部四郎東大名誉教授)―同学の人々をしてかくいわしめた在野の研究者、山田秀三氏の「アイヌ後地名の研究―山田秀三著作集」全4巻が完結した(草風館)。小冊子に発表されてきた同氏の文章や論文がまとめて公刊された意義は大きい。
よく調べると北海道では溝のような小川にまでびっしりアイヌ語地名がついている。漁業や狩猟で暮してきた民族らしく、そのほとんどが地形からつけた地名である。
語尾に「ペッ」(一般的に大きな川の意)、「ない」(一般的に小さな川、沢の意)、「ウッシ」(××が群在する所の意)がつく地名が、アイヌ語地名の半分以上を占めている。青森、岩手、秋田の東北3県の主として山間部にも無数のアイヌ語地名が残っている。
津軽海峡をはさんだ北海道側と青森側には、同じアイヌ語地名の土地がたくさんある。これは北海道と東北の北半部が地名上は切れ目のないアイヌ語地名地帯であり、東北に住んでいた「エゾ」がアイヌ語族だったことを示している。
以上が山田秀三氏の研究の要約である。この著作集の第4巻
第一部 アイヌ語地名のために
北海道のアイヌ地名十二話
アイヌ語種族考
アイヌ語族の居住範囲
アイヌ語の地名を大切にしたい
アイヌ地名・アイヌ語の古さ
狩猟のアイヌ地名を尋ねて
黒曜石のアイヌ地名を尋ねて
第二部 アイヌ語地名分布の研究
津軽海峡のアイヌ語時代
北海道のナイとべツ
東北地方のナイとペツの比
アイヌ語地名の三つの東西
メナという地名とその分布
↑「内容紹介」から続く(その2)
山田氏はアイヌ語地名の群在の南限を、秋田、山形の県境と仙台北部を結ぶ線としている。奈良時代初期の和人政権と「エゾ」勢力圏との境界に一致するという。富士山のアイヌ語起源説や語路合わせ的な解釈はきびしく排している。
83歳の現在も東京都大c区の洗足池に近い自宅と北海道を頻繁に往来して研究と調査に没頭している。
「松浦武四郎や永田方正が大きな遺産を残してくれた。金田一先生や知里君がそれを机の上の研究で深めた。僕は現地調査をやったんだ」
「なにも天下に自慢する気はないのよね。要するに自分の道楽なんだから。でも骨とう道楽だってニセ物つかまされたらいやでしょ。僕も自分の道楽でニセはいやだから、調査と解釈にはうるさいの」
「本来の目的は東北の古代史でね。アイヌ語地名の研究は、それに到達する手段としてやったんだけど、もう残り時間が少なくなっちゃって」
著作集の中での珠玉は、第1巻に収められている「アイヌ語種族考」(昭和47年に発表された論文)といってよいだろう。アイヌ語地名との出合い、金田一、知里両博士との交友を語りながら、簡潔に研究の成果をまとめている。
アイヌ語の研
内容説明
北海道・東北地方のアイヌ語地名の分布・系統を解明した山田地名学の宝庫。
目次
第1部 アイヌ語地名のために(北海道のアイヌ地名十二話;アイヌ語種族考;アイヌ語族の居住範囲 ほか)
第2部 アイヌ語地名分布の研究(津軽海峡のアイヌ語時代;北海道のナイとペッ;東北地方のナイとペッの比;アイヌ語地名の三つの東西;メナという地名とその分布)