内容説明
大国支配からの独立、イコノクラスム、グローバリズムにより生じた他者との出会い。そんな激しい変化の渦中にあった16・17世紀のオランダ社会が求めたのは、物語や教訓ではなく、「感性」にうったえかける静物画だった。現実を超える精緻な描写、ふとした日常を切り取った典拠なき場面、和紙に刷ることで生まれる奥深い黒。見るものの心をざわめかす静物画は新しい認識の扉を開く回路となった。
目次
プロローグ 日常性のパラドックス
第1章 些細なものに神を感じる―「静物画」の誕生
第2章 オランダ美術の土着性―ボッスの「笑い」と美術市場
第3章 アレゴリーからファッション―アルチンボルド“ウェルトゥムヌス”再考
第4章 まるで生きているようだ―ホルツィウス“ファルネーゼのヘラクレス”
第5章 美的テクノロジー―「画家・版画家」レンブラントの芸術的な挑戦
第6章 「黒」の美学―レンブラントと“アジア”
第7章 この先へ進め(プルス・ウルトラ)―静物画家アルベルト・エックハウトの「ユートピア」
第8章 「オランダ」の表象としての静物画―カルフと中国磁器
第9章 陶磁器の白い輝き―フェルメールからモンドリアンへ
第10章 「静物画」の自意識―終わりの始まり
著者等紹介
尾崎彰宏[オザキアキヒロ]
1955年福井市生まれ。東北大学文学部卒業。同大学院文学研究科博士課程後期退学。現在、東北大学文学部教授。専門は、バロック美術、ネーデルラント美術史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。