内容説明
「読むこと」そして「見ること」で得られるイメージの相違と連関についての議論は古代より続き、いまも多彩な主張が乱立している。それらを精査し、「読書とイメージ」「視覚的隠喩」「小説の映画化」「“物語る絵”のナラトロジー」「小説と挿絵」の五つの視点から、ことばと形象の交叉がもたらす経験とその歴史的変遷を、多くの実例をひきながら問いなおす。
目次
第1部 ことばとイメージ(読書とイメージ;視覚的隠喩は可能か;詩と絵画のパラゴーネ)
第2部 小説の映画化(物語と描写;語りのモード)
第3部 「物語る絵」のナラトロジー(「物語る絵」の叙法;近代絵画における語りの視点)
第4部 小説と挿絵(近代小説と挿絵;明治期小説の「改良」と挿絵)
著者等紹介
西村清和[ニシムラキヨカズ]
1948年京都府生まれ。東京大学文学部美学芸術学科卒業、同大学院修了。東京大学大学院人文社会系研究科教授。著書―『遊びの現象学』(勁草書房、サントリー学芸賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きつね
9
おすすめ。詩、小説、絵画、挿絵、映画などの諸ジャンルが互いにどう影響を与えあって来たか、それを論ずる我々の説明原理がいかに誤解にまみれてきたかの論証。依拠する議論は基本的に英米系で、大陸系の論者の議論は古めのものが多い。美学の政治性がどうの、という話は出てこないが、本書の構成からすれば不満に感じない。ただ、リクールがあまりに軽く切り捨てられている。存在論、宇宙観みたいな話はともかく、「虚構の時間経験」はもう少し評価しようがあると思うし、そこが本書で議論される「仮象」の問題と繋がるところだと思うのだが。2013/12/26
ひろ
3
やっと読み終わったー。小説やら映画やらと盛りだくさんの内容で、読み切るにはかなり骨が折れる。だけど、やっぱりトロンプ・ルイユだったりアレゴリーの話しのところは捨てられない!とりあえず一回通読しようと思ってかなり早足で読み進めてしまったから、次はゆっくりと、興味のある部分を精読したい。2013/11/28
あかふく
1
「ことば」と「形象」は互いに別のものであると考える人々と、同じものであると考える人々がいたが、前者も後者もあまりにも安易だったのではないか。言葉を読むことは「イメージ」を心に浮かべることではない。そのような問題意識からまずは言葉と形象を別のものとしたうえで理論が互いに参照できるか否かを検討する。中心はナラトロジーであり、その理論に対しても批判的検討(その理論家たちも言葉と形象を曖昧にしか把握できていなかった場合が多い)を行う。芸術ジャンル間の関係について考えるための丁寧な入門書。2014/02/09
あかふく
0
「イメージ」とは何か、そして「ことば」とどのような関係を持つか、という問題は古い。この問題をとくに修辞学とその成果を引き継いだナラトロジー、受容美学にもとづき、読書(文字や語を読むこと)とイメージ(頭に浮かぶ)、隠喩、言語から離れてイメージを「純粋に」見ることは可能か、小説を映画化すること、物語を持つ絵画、挿絵等々の問題を丁寧に整理し判断する。第Ⅰ部は主に違いについて、第Ⅱ部以降はその転用の可能性を近代(小説)における<ともにある>視点によって探る。共感しうるようなものの成立。2013/10/13
ubon-ratchat
0
適用範囲を広げやすい本です。各種の物語メディアに興味がある方は是非読んでください。例示も多くて比較的読みやすいです。2009/12/30