内容説明
アフリカやオセアニアの非西欧の造形物は西洋文化圏においてどのように言説化/視覚化されたのか?マチスやゴーガンら“発見者”であるフランスと、それを受容し、自国のアイデンティティ確立に組み込んだアメリカ。相互の概念のずれを鋭く指摘するなかで、「プリミティヴィスム」あるいは「プリミティヴィズム」という言説が、20世紀の美術史の中でいかに形成され、どのような意味を担ってきたかを問う。
目次
変容する言説―「プリミティヴィスム」と「プリミティヴィズム」
第1部 フランスにおける「プリミティヴィスム」(世紀の転換期におけるマチスと「プリミティフ」なるもの;漂泊するアイデンティティ―ゴーガンの場合;文化の境界変動―フランスにおける「プリミティヴィスム」)
第2部 アメリカ合衆国における「プリミティヴィズム」(ニューヨーク近代美術館と「二〇世紀モダニズム」;アメリカン・アイデンティティと「プリミティヴィズム」)
名づけ得ざるもの
著者等紹介
大久保恭子[オオクボキョウコ]
1954年岡山生まれ。大阪大学大学院文学研究科芸術学専攻博士課程(後期)単位取得修了。博士(文学)。現在、関西外国語大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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dilettante_k
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09年著。「プリミティヴィスム」と「プリミティヴィズム」。20世紀を通じてアフリカ、オセアニア器物を取り巻く仏・米の美術史上の言説を前衛芸術への影響や展示を踏まえて対比。西洋における他者性の展開を照射する。マチスやゴーガンの作品分析から、他者との異化と同化を繰り返したフランスとMoMAにおけるフォーマリズムを基調とした『20世紀美術におけるプリミティヴィズム展』の分析からは、アメリカが企図した他者とのアナクロニックな短絡を読みとる。他者性を通じアイデンティティ不安の回復を図る両者の軌跡を明晰に論じた良書。2014/08/14
my
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論の構成がしっかりしててヨカッタ2012/07/03