内容説明
望まれるのは、なんらかの理念、原則に導かれながら、相互の妥協点を模索する作業の上に立つデモクラシーの政治にちがいない。そこから生み出されてくるのは、いわば芸術作品としての政治であろう。政治を単なる「妥協」ではなくて、「妥協の芸術」と目さなければならないゆえんである。そして、このような見方は、「可能事の芸術」とするビスマルクの政治観にいきつく。学部長を二期四年つとめ、日本政治学会理事長を経験するなど、さまざまな集団の組織運営の衝に当たってみて、私にも、ビスマルクの思いが、現実感をもって伝わってくる。際限のない話し合いの積み重ねの中で、妥協点を思案し、理念の旗の下でなにが可能なのかをさぐっていくのは、まさに芸術の営みといってよかろう。
目次
1 早稲田政治学と現代政治学
2 90年代政治を問う
3 90年代に読む
4 早稲田よ
5 日常の断片