内容説明
コレクション第二期始動!歴史のベールに隠された鶴屋南北の半生と妖しき芝居の世界へ誘う表題作ほか4篇を収録。
目次
鶴屋南北冥府巡
二人阿国
蘭鋳
琴のそら音
泉の姫
浅葱裏の歌舞伎見物
芸能者たちの物語
わたしは、カメレオンより、えらい
嘘と実
綺羅をかざった、男たち。
はじめての舞踊劇
より華やかに、より深く
著者等紹介
皆川博子[ミナガワヒロコ]
1930年、京城生まれ。東京女子大学英文科中退。72年、児童向け長篇『海と十字架』でデビュー。73年6月「アルカディアの夏」により第20回小説現代新人賞を受賞後は、ミステリー、幻想、時代小説など幅広いジャンルで活躍中。『壁―旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会協会賞(85年)、「恋紅」で第95回直木賞(86年)、「薔薇忌」で第3回柴田錬三郎賞(90年)、「死の泉」で第32回吉川英治文学賞(98年)、「開かせていただき光栄です」で第12回本格ミステリ大賞(2012年)、第16回日本ミステリー文学大賞を受賞(2013年)
日下三蔵[クサカサンゾウ]
1968年、神奈川県生まれ。出版芸術社勤務を経て、SF・ミステリ評論家、フリー編集者として活動。編著『天城一の密室犯罪学教程』(日本評論社)は第5回本格ミステリ大賞(評論・研究部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
305
珍しい皆川博子の時代小説。主人公は四世鶴屋南北(勝俵蔵)。もっとも物語の大半は、まだ伊之助であった彼の無名時代。寛政から文政時代の江戸社会が活写される。文体も江戸風である。ことにプロローグたる『彩入御伽草子』などは、歌舞伎の台本を思わせる書きぶり。希代の名役者でありながら、不遇をかこつ尾上松助。なかなか立作者になれない伊之助。最後は彼らの仕掛けたケレンの大技が江戸の町を席捲する。ようやく時代が彼らに追いついたのだ。題して『天竺徳兵衛韓噺』。歌舞伎から如実に江戸が見える小説。面白い。2024/03/26
藤月はな(灯れ松明の火)
43
『二人阿国』は私の中の「女」を呼び起こさせるような作品でした。「三郎佐の女になるんだから誰とも寝たくない」と言ったお丹を「見損なった」と打擲するお国の気持ちが分かります。誰よりも無垢で純真故に誇りを持って選択していた思っていた者が実は打算で選択していたと思ったら私も「この売女!」と怒り狂って殴り掛かっていると思います。大衆に媚びた「お上品」な三郎佐の舞台に身を寄せたお丹と塵のように瞬く間に使い古される目新しさにある一瞬の普遍を舞うお国の対比が艶やか。そしてお国の最期が生への苦悶から菩薩になった場面が印象的2014/09/28
ぐうぐう
22
『皆川博子コレクション』第二期は、文庫本未収録というコンセプトはそのままに、時代ものを中心に編まれている。第二期最初の巻である本書は、『鶴屋南北冥府巡』と『二人阿国』の長編二本、舞踏劇の台本「泉の姫」を含む短編三本、そしてエッセイという構成。『鶴屋南北冥府巡』は、その冒頭からして心を鷲掴みにされる。魅惑的で緊張感に満ち、ゾワゾワとさせる、こんな導入部を読まされたら、たまったもんじゃない。さらに驚くのが、鷲掴みにした心を、そのままエンディングまで片時も離さずに一気に引き摺り込んでいくってことだ。(つづく)2015/09/22
秋良
9
人情なんて甘ったるいものじゃない、毒々しくて、濃くて、嵐のような執念をもっていなければ生き抜くことが出来ない江戸の芸の世界の激しさが楽しい。生き馬の目を抜くってやつですね…。エッセイに「家事する時も片手が本で塞がってて手抜きになった」って書いてあって、活字中毒ハンパ無いと思った。2017/09/09
rinakko
7
「二人阿国」は既読だったので、今回は表題作と短篇、エッセイを堪能した。2014/08/12