内容説明
信長が息子を託した男―森蘭丸の実兄にして織田信忠の重臣・森武蔵長可。伊勢長嶋を初陣に、信忠を補佐して甲斐・信濃の名門武田家を制圧し、信忠を信長の後継者にのしあげた、絶世の美男子ながら苛烈ないくさぶりの武将。本能寺の変で無政府状態となった東美濃。混乱に乗じて襲いかかる、かつての部下や同僚たち。つかの間の安息に身をまかせるも、小牧・長久手で散った。信長―秀吉の転換期に生き、血の涙を流してたたかい、「鬼」と恐れられた悲運の猛将の生涯の物語。
著者等紹介
鈴木輝一郎[スズキキイチロウ]
1960年岐阜県生まれ。日本大学経済学部卒業。91年『情断!』でデビュー。94年「めんどうみてあげるね」(『新宿職安前託老所』出版芸術社所収)で第四七回日本推理作家協会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
42
苛烈な様子から「鬼」と称された森武蔵。戦国の動乱の世を生き抜くには敵味方関係なく、非常になりきらなければならないのだと思いました。血の涙を流した悲運の猛将は人々に恐れられ、悲運をたどるように鬼として生き抜いたのでしょう。面白かったです。2023/12/20
鐵太郎
9
この作家は、言葉がいい。「殿に、ひとつだけお願いがございます」──「何だ」──「今日だけは、泣いてよろしいでしょうか」──「駄目だ」長可は即答した。「辛いときには笑え。苦しいときにこそ笑え。運という逆流に棹をさして遡るときに、わざわざ涙という水を増やすこともない」── ・・・心に染み入る言葉でした。2011/01/22
doraco
2
戦国時代が苦手だった私がうっかり読んじゃった、どっぷりと本格的に戦国な小説。生き残るために殺すのが日常だった血生臭い時代を生きた人々の息吹が伝わってきます。「運が指の間からさらさらと落ちていくのが・・・」心が痛かったです><2011/11/05
ちむ
2
こういう長可は新鮮だった。何より信忠様が・・・信忠様がすごいカッコよい。長可が信忠の事を「孤独を嫌っているが孤独な人」と語っているけどこの本の信忠様を物語る一言。この小説の信忠様と長可の擬似兄弟ぶりは微笑ましい。「お前は私を裏切るな」も名台詞ですな。史実じゃ長可の妹が信忠様の側室だったそうだしホント血よりも濃い関係性だなぁ。
rinrinkimkim
1
鈴木さんが時代小説をご自慢されていたので読んでみました。ちょっと文士の講釈のようなテンポでした。背丈が五尺って150センチちょっと。私と同じ(152㎝)か少し大きいだけ。それで城を守り、部下を連れての戦い。あたしゃもすこし背が欲しい。は昭和の文句だけど長可も心で叫んだことでしょう。ママのことが大好きだった長可。いつの時代もオトコはマザコン♪かわいい。2023/05/12