内容説明
二見食品社長の長男・貴一郎は、会社の後継ぎを弟にまかせ「調査室」という閑職で、世捨て人同然の毎日を過ごしていた。貴一郎の助手に配属された河口冴子は、その孤独な横顔に秘められた過去に興味をもつ。そんな時、調査室に謎の男から、脅迫電話がかかってきた。貴一郎と冴子は、その正体をつきとめるべく、調査を開始するが…。戦争が生んだ狂気の殺人を描く傑作長編「鎮魂の森」。ほかに短篇の作表作「お墓に青い花を」を併せて収める。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
koo
6
樹下太郎長編初読みです。冒頭主人公二見が終戦直前に書いた遺書の内容を公開されたくなければ300万円を払えという脅迫を受けストーリーが展開します。プロットは複雑ではなく脅迫される様な遺書の内容の謎、何故遺書が脅迫者に渡ったのかという謎は読み進めたら自然に解き明かされますがそれよりもストーリー全体を覆う戦時中〜戦後の独特な考え方、倫理観から登場人物たちが選択する行動や考えが本筋だと思われますがちょっと現代読者である自分には許容しかねます。予想外の結末と不思議な読後感が残る作品でした。2024/06/19
みい⇔みさまる@この世の悪であれ
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☆×3.0…ミステリーとしては要素は不足気味。犯人指定は事実上ないので分からなくても問題はないです。だけれども、余計なことを遺書に書いてしまったがために脅迫を受けてしまう男はあまりにも哀れに映りました。もう1つの短編のほうも男が実に哀れに映ってしまう作品です。目先の欲にくらむとこう言うことになってしまうという教訓も含まれています。世の男性方、両手に華と浮かれているとこの作品の男のようになりますよ(苦笑)2012/01/29