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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サラダボウル
18
デンマーク、1950年の小説。デンマークについて何も知らないし、読めるかなと少し不安でしたが、時代が違うなんてまるで感じさせない軽やかさに驚き、楽しみました。大学入学のため上京した青年は、父の知り合いのもとに下宿、復興省での仕事もみつかる。下宿先には幼い子をもつ若い夫婦、職場での仕事は‥?小説は、淡々ととぼけた感じで、風刺を織り交ぜる絶妙さ。流されつつ抵抗しつつの青年は、古今東西応援したくなります!2022/02/21
Midori Nozawa
12
訳したのは私です。2015年に出版しました。デンマーク語からです。なんどか読んでいますが、今回読みたかったのは、著者フィン・セーボーの自伝の中に、本書を書いたいきさつが出て来たからです。フィンは高卒後生協で実務見習いをして、1936年(20歳の頃)徴兵され、ドイツとの国境で任務に就く。士官学校を経て、再び生協関連に就職し、のち大学で国家学を学ぶ。途中結婚生活を始めた頃、ナチスのポーランド侵攻があり、召集される。戦後の混乱期にお役所では大量のアルバイト生を雇う。その一人がフィンだった。仕事らしい仕事はない。2021/11/09
Midori Nozawa
10
医者で待ち時間に3日かけて読み終えました。大学の同期会で50年ぶりに再会した友は、この本を手にして私の変貌に驚いたようでした。彼女は恒例にしている年末年始のイタリアスキー旅行で現地でこの本を読んでいると葉書をくれました。デンマーク語は62歳から習いました。何のとりえもない田舎娘だった私が一冊の本を翻訳できたことは奇蹟のようです。再読してみて、面白さにげらげら笑いたいほどでした。この本のあと、同じ作者フィン・セーボーの長編を読んですっかり作者のタッチや皮肉にはまっています。デンマークが今や身近な国です!2018/02/09
神在月
8
主人公が気の毒になった。ろくでもないクソガキやその両親、元歯医者夫妻など一風変わった人々に囲まれ、職場にも信頼できる人物がいない。役所や戦後すぐのデンマークの社会をアイロニカルに描いているが、作者はそれを冷笑的に描くのではなく主人公を取り巻く変わった人々の生態を淡々と素描してみせる。従来、私は主人公に感情移入して一気に物語世界に没入することに読書の喜びを見出していたが、それとは全く一線を画す作風。まるで道端の名もない花を愛でる午後のお散歩のようなどこかほのぼのとしたユーモアと世界観に心が満たされてゆく。2020/10/16
Masahiro Matsunaga
2
後の方は飛ばし読みになってしまったが、この小説に書かれている世相の暗さに、驚きを越えた衝撃を覚えた。 何が衝撃だったのか、ということになるが、子どもの躾に際して、決して手を挙げてはいけないという事が、国家のイデオロギー、標語みたいに定着させられてしまっているような節を感じたからなのだが、後の方で、それは作者の本心で書いてはいなかったと分かるので救われるのだが、この著作の舞台になった時代に、デンマークが民主主義と共産主義のどちらに舵を切るかの段階で試行錯誤を繰り返していたのが分かって興味深い。 2021/12/05