出版社内容情報
(2000年『DNAチップ応用技術 』普及版)
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DNAチップ(DNAマイクロアレイ)は,シリコンやガラスの基板上に塩基配列が既知のDNA断片を乗せたチップである。これに,調べたいDNA断片を流し込み,ハイブリダイゼーションにより,遺伝子を特定する仕組みになっている。DNAチップのアイディアは以前からあったが,半導体製造で用いるフォトリソグラフィーの技術を使って,DNA断片を高密度に固相表面に配置することが可能になり,一躍,脚光を浴び,1998 年後半から一気に広まった。
2003年4月14日,国際プロジェクト「国際ヒトゲノム計画」はヒトゲノムの解読完了を宣言した。今後は,これらの情報をチップ化し,ウイルスの検出,疾患遺伝子や体質の鑑別,ガンや糖尿病などの診断,薬効検査,創薬など多用な展開が考えられている。また,半導体技術,薄膜技術,光検出技術などを動員して,新しいDNAチップの開発も活発である。DNAチップ技術は,ポスト・ヒトゲノム解読の重要な要素技術となっている。
本書は,東京農工大学・松永 是先生およびゲノム工学研究会にご監修をお願い致し,DNAチップの開発動向から,検出系・装置の動向,そして多岐にわたる応用までを各分野の第一線でご活躍中の方々にご執筆いただいた。また,SNPs,プロテオーム解析,バイオインフォマティクスなど,今後の主要技術の展望についてもふれていただいた。
バイオ,医療,エレクトロニクス分野はもとより,DNAチップ技術に興味をお持ちの方々すべてに最新の情報を提供できれば幸いです。
なお,本書は 2000年7月に『DNAチップ応用技術』として刊行されました。このたび普及版を刊行するにあたり,内容は当時のままであることをご了承願います。
2005 年 12 月 シーエムシー出版 編集部
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松永是 東京農工大学 工学部 生命工学科 教授
(現)東京農工大学 大学院 共生科学技術研究院 工学府長;工学部長;教授
神原秀記 (株)日立製作所 中央研究所 技師長
(現)(株)日立製作所 中央研究所 フェロー
釜堀政男 (株)日立製作所 中央研究所 バイオシステム研究室 主任研究員
(現)(株)日立製作所 中央研究所 ライフサイエンス研究センタ 主任研究員
川口竜二 (株)エスアールエル 遺伝子・染色体解析センター 責任者;東京農工大学 共同研究開発センター 客員教授
(現)早稲田大学 先端科学・健康医療融合研究機構 教授
大竹久夫 広島大学大学院 先端物質科学研究科 分子生命機能科学専攻 教授
(現)大阪大学大学院 工学研究科 生命先端工学専攻 教授
滝口昇 広島大学大学院 先端物質科学研究科 分子生命機能科学専攻 助手
久原哲 九州大学大学院 農学研究院 教授
(現)九州大学大学院 農学研究院 遺伝子資源工学部門 教授
高橋浩二郎 (現)広島国際大学大学院 総合人間科学研究科 医療工学専攻 専攻長;教授
竹山春子 東京農工大学 工学部 生命工学科 助教授
(現)東京農工大学 大学院 共生科学技術研究院 助教授
竹中繁織 九州大学大学院 工学研究科 化学システム工学専攻 助教授
(現)九州工業大学 工学部 物質工学科 教授
澤上一美 プレシジョン・システム・サイエンス(株) 開発企画室
(現)プレシジョン・システム・サイエンス(株) 研究開発本部
田島秀二 プレシジョン・システム・サイエンス(株) 代表取締役
養王田正文 東京農工大学 工学部 生命工学科 助教授
(現)東京農工大学 大学院 共生科学技術研究院 教授
福島雅夫 (株)エスアールエル 遺伝子・染色体解析センター 研究開発課
馬場嘉信 徳島大学 薬学部 教授;科学技術振興事業団 CREST
(現)名古屋大学 大学院工学研究科 教授
有國尚 サイファージェン・バイオシステムズ(株) 鎌倉研究所 所長
(現)同志社大学 研究開発推進機構 バイオマーカー研究センター 助教授
斉藤賢治 サイファージェン・バイオシステムズ(株) 鎌倉研究所 主任研究員
(現)サイファージェン・バイオシステムズ(株) バイオシステムズ事業本部
大門尚志 宝酒造(株) 主任研究員
(現)タカラバイオ(株) ドラゴンジェノミクスセンター 副センター長
鈴木定彦 大阪府立公衆衛生研究所 主任研究員
(現)北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター 教授
市原竜生 日清紡(株) 研究開発センター
田丸亜貴 大阪府立公衆衛生研究所
アミン・ルフル 大阪府立公衆衛生研究所
勝川千尋 大阪府立公衆衛生研究所
牧野正直 国立療養所 邑久光明園 園長
阿部千代治 結核予防会 結核研究所
加藤貴彦 宮崎医科大学 医学部 公衆衛生学講座 教授
(現)宮崎大学 医学部 公衆衛生学 教授
今井博久 米国ジョージア州立医科大学 医学部
(現)旭川医科大学 健康科学講座 助教授
村上康文 東京理科大学 基礎工学部 生物工学科 ゲノム生物学研究室 教授
河原林裕 (現)(独)産業技術総合研究所 生物機能工学研究部門 主任研究員
今本文男 ライフテックオリエンタル(株) 科学技術顧問
(現)大阪大学 微生物病研究所 分子生物学寄附研究部門 教授
高橋勝利 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科
(現)(独)産業技術総合研究所 生命情報科学研究センター 細胞情報チーム長
執筆者の所属は,注記以外は2000年当時のものです。
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〈総論編〉
第1章 DNAチップと応用(松永是)
1. ポストシークエンス時代のバイオテクノロジー
2. ゲノム工学研究会
3. DNAチップ技術の将来
4. おわりに
第2章 DNA計測技術の動向(神原秀記,釜堀政男)
1. はじめに
2. 応用面からみたDNA計測とDNA計測法
3. 最近話題のDNA計測法
3.1 キャピラリーアレー電気泳動装置
3.2 電気泳動チップ
3.3 DNAチップ
3.4 ビーズ技術
3.5 質量分析
3.6 パイロシーケンシング
第3章 DNAチップの開発動向(川口竜二)
1. はじめに
2. DNAチップ法と遺伝子解析プロセス
3. DNAチップ解析の各工程における技術開発
4. DNAチップの現状と方向性
第4章 生命体ソフトウェアの開発(大竹久夫,滝口昇)
1. はじめに
2. 大腸菌とゲノム情報
3. バーチャル大腸菌システム
3.1 大腸菌の機能ルールとRuleKB
3.2 機能ルールを呼び出すためのルール
4. Vestの実行例
〈DNAチップ・装置編〉
第5章 DNAマイクロアレイの実際とその応用(久原哲)
1. はじめに
2. マイクロアレイの技術
2.1 マイクロアレイの基本技術
2.2 マイクロアレイの実際
3. チップの応用 RNA発現解析/DNAへの応用
4. 今後の展開
第6章 ダイヤモンドを用いた保存型DNAチップ(高橋浩二郎)
1. はじめに
2. なぜ,ダイヤモンド?
3. オリゴDNAの固定化
4. cDNAライブラリーの固定化
5. 二本鎖DNAの固定化
6. 二本鎖cDNAライブラリーの考察
7. 固定化gDNAチップとレプリカ・チップの考察
8. バーチャル自動遺伝子診断装置
9. 将来の展望
第7章 磁気ビーズ利用DNAチップ(竹山春子,松永是)
1. はじめに
2. 従来型DNAチップ
3. ビーズを用いた遺伝子検出
4. DNA固定化磁性細菌微粒子を用いた遺伝子検出法
4.1 種特異的DNAプローブ固定化磁性細菌微粒子を用いたマグロ魚種判別
4.2 磁気ビーズマイクロアレイ
第8章 電気化学法によるDNA検出(竹中繁織)
1. 新規DNA結合性リガンドの開発
2. 検出装置と測定
3. DNAプローブ修飾電極の作成
4. ハイブリダイゼーション反応
5. DNA検出例
5.1 オリゴヌクレオチドの検出
5.2 プラスミドDNA上の目的遺伝子配列の検出と定量
6. 検出操作の簡略化
7. 超高感度化
8. PCR産物の検出例
9. DNAマイクロアレイへの応用
第9章 自動装置(澤上一美,田島秀二)
1. はじめに
2. DNAチップ技術の基本
3. 一貫した自動化システム構築への将来展望
4. まとめ
第10章 マイクロマシンによるDNA解析(養王田正文)
1. はじめに
2. 電気泳動とPCRのマイクロ化
3. 集積化DNA解析チップ
4. DNA解析をマイクロ化することのメリットとデメリット
〈応用編〉
第11章 医療計測への応用(川口竜二,福島雅夫)
1. 病原微生物同定解析への応用
2. シゲラ,サルモネラ菌のDNAチップ法による検出・同定
3. 発現解析の診断への応用
4. 遺伝子変異解析への応用
5. BACライブラリーチップの染色体異常解析への応用
6. まとめ
第12章 SNPs(一塩基多型)解析(馬場嘉信)
1. はじめに
2. ゲノムシークエンシングからSNP解析へ
3. DNAチップによるSNP解析
4. 集積型マイクロチップによるSNP解析
5. おわりに
第13章 SELDIプロテインチップRシステムによるバイオマーカー探索技術(有國尚,斉藤賢治)
1. はじめに
2. SELDIプロテインチップ技術
3. タンパク質バイオマーカーの探索と分析の手法
4. SELDIプロテインチップ技術を用いたマーカー探索
5. SLEDIプロテインチップを用いたマーカー探索の応用例 前立腺ガン/神経膠腫
6. プロテオーム解析の現状と問題点
第14章 遺伝子発現プロファイリング(大門尚志)
1. はじめに
2. DNAチップの原理
3. DNAチップのための装置とソフトウェア
3.1 DNAチップ作製装置
3.2 DNAチップ読み取り装置
3.3 データ解析ソフト
3.4 DNAチップ
4. DNAチップを用いた遺伝子発現モニタリング
4.1 DNAチップ
4.2 発現実験の手順
4.3 データ解析
5. DNAチップの応用と課題
第15章 結核菌の耐性診断
(鈴木定彦,市原竜生,田丸亜貴,アミン・ルフル,勝川千尋,牧野正直,阿部千代治)
1. はじめに
2. 結核菌の多剤耐性獲得機序
3. 結核菌薬剤耐性に関与する遺伝子
3.1 イソニアジド(INH)耐性
3.2 リファンピシン(RFP)耐性
3.3 ピラジナミド(PZA)耐性
3.4 エタンブトール(EB)耐性
3.5 ストレプトマイシン(SM)耐性
3.6 カナマイシン(KM)耐性
3.7 その他の薬剤に対する耐性に関与する遺伝子
4. これまでの遺伝子工学的手法による結核菌の耐性迅速診断
5. DNAチップによる薬剤耐性結核菌の迅速鑑別
6. おわりに
第16章 環境ゲノム(加藤貴彦,今井博久)
1. はじめに
2. 疫学と分子疫学
3. 発癌感受性素因について
4. 尿路上皮癌の発癌感受性素因
5. 分子疫学研究の予防医学的意義
6. 発癌感受性研究の問題点
7. DNAチップ技術への期待
8. おわりに
第17章 出芽酵母遺伝子のマイクロアレイによる発現解析(村上康文)
1. はじめに
2. 出芽酵母における遺伝子発現プロフィールの解析
3. オリゴDNAマイクロアレイによる遺伝子発現プロフィールの解析
4. マイクロアレイシステムの改良の試み
第18章 好熱古細菌ゲノム解析(河原林裕)
1. はじめに
2. 世界での好熱菌ゲノム解析
3. 解析対象とした超好熱古細菌
4. 好熱菌ゲノムの全塩基配列決定
5. ゲノム解析結果
6. 各菌のゲノム解析から明らかとなった特長
7. 古細菌間のゲノム比較
8. ゲノム解析データの利用-新規機能の探索-
9. ゲノム解析データの利用-機能解析に向けて-
10. ゲノム解析の今後
第19章 cDNAライブラリー(今本文男)
1. はじめに
2. 発現遺伝子のcDNA作製
3. 細胞の発現遺伝子像を反映するcDNAライブラリー
4. cDNAライブラリーのrarecDNA濃縮
5. cDNAライブラリーのrarecDNA捕捉
6. 完全長cDNAライブラリー作製
7. おわりに
第20章 2D-PAGE画像処理におけるBioinformaticsの重要性(髙橋勝利)
1. はじめに
2. 2D-PAGEによるプロテオーム解析
2.1 2D-PAGEによる蛋白質分解
2.2 質量分析による蛋白質スポットの同定
2.3 2D-PAGEマップの比較によるプロテオーム解析
3. 2D-PAGE画像のコンピュータ画像処理
3.1 スポットの自動認識と形状推定
3.2 スポットパターンの自動照合
3.3 マスタースポットパターンの自動生成
4. まとめ
目次
総論編(DNAチップと応用;DNA計測技術の動向;DNAチップの開発動向 ほか)
DNAチップ・装置編(DNAマイクロアレイの実際とその応用;ダイヤモンドを用いた保存型DNAチップ;磁気ビーズ利用DNAチップ ほか)
応用編(医療計測への応用;SNPs(一塩基多型)解析
SELDIプロテインチップシステムによるバイオマーカー探索技術 ほか)
著者等紹介
松永是[マツナガタダシ]
東京農工大学工学部生命工学科教授。(現)東京農工大学大学院共生科学技術研究院工学府長;工学部長;教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。