出版社内容情報
(1998年『ポリマーバッテリーの最新技術』普及版)
【刊行にあたって】
携帯情報機器および電気自動車の進展,電力貯蔵に対する社会的関心の高まりとともに,そのキーデバイスとして,高性能の二次電池の進展に対する期待は大きい。特に,これらの電池に関する高エネルギー密度化および薄型化の要求は切実なものになってきている。電池の形状やサイズも製品の用途に合った様々なものが求められ,また安全性については完全なものが求められている。
電池の市場は拡大を続け,まもなく国内だけでも1兆円(年当たり)産業になろうとしている。また,電気自動車の汎用も間近なものとなり,新型二次電池に関する需要はとどまるところを知らない。特に,高エネルギー密度化のためにリチウム系二次電池の新展開に注目が集まっており,これらの開発研究においてはポリマー材料の進展がキーテクノロジーになりつつある。
これまで,リチウム系二次電池の市場は日本の独壇場であったが,ポリマー電解質を用いた高性能電池の提案が欧米,特に米国を中心としたグループから行われており,関連分野の開発競争が現在活発化している。
そこで本書では,ハイテク電池開発にポリマー材料がいかに係わっているかを紹介するため,この部分の開発研究で第一線で活躍中の方々に執筆を願い,その動向を紹介する。その内容は日進月歩のホットな科学技術データに基づいた解説がなされており,今後の材料・技術開発にとって進むべき方向性を示すものと確信する。
東京農工大学大学院 教授 小山 昇
【執筆者一覧(執筆順)】
小山 昇 東京農工大学 工学部 応用化学科 教授
(現)東京農工大学大学院 教授
髙見則雄 (株)東芝 研究開発センター 主任研究員
(現)(株)東芝 研究開発センター 先端機能材料 ラボラトリー 室長
矢田静邦 (株)関西新技術研究所 (KRI) エネルギー変換研究部 部長
(現)(株)KRI エネルギー変換研究部 理事/エネルギー変換研究部長
山本隆一 東京工業大学 資源化学研究所 教授
上城 剛 東京工業大学 資源化学研究所
白石貢一 東京工業大学 資源化学研究所
波戸崎修 東京農工大学 工学部 応用化学科
金子武平 (現)日本曹達(株) 高機能材料研究所 無機材料研究部 部長
高橋 弘 日本曹達(株) 機能製品研究所 機能材料部 主席研究員
白川英樹 筑波大学 物質工学系 教授
外邨 正 松下電器産業(株) 中央研究所
米山 宏 大阪大学大学院 工学研究科 教授
(現)阿南工業高等専門学校 校長
井土秀一 (株)ユアサコーポレーション 研究開発センター 主幹
明石寛之 ソニー(株) 中央研究所 材料物性研究部
(現)ソニー(株) マイクロシステムズネットワークカンパニー エナジーカンパニー
開発部門 統括課長
世界孝二 ソニー(株) 中央研究所 材料物性研究部
岩久正裕 東京農工大学 工学部 応用化学科
植谷慶雄 日立マクセル(株) 嘱託;Battery Engineering, Inc. Chairman
森彰一郎 三菱化学(株) 横浜総合研究所 リサーチフェロ
(現)(独)物質・材料研究機構 技術展開室
重原淳孝 東京農工大学 工学部 応用化学科 教授
(現)東京農工大学 工学部 有機材料化学科 教授
大西 賢 東京農工大学 工学部
(現)University of Houston
丹治博司 旭化成工業(株) 機能膜事業部
(現)旭化成ケミカルズ(株) ハイポア事業部 ハイポア営業部長
河野公一 東燃化学(株) 技術開発センター ゼネラルマネージャー
(現)東燃化学那須(株) 研究開発部 部長
菅原秀一 呉羽化学工業(株) 機能樹脂部 技術担当部長
(現)三井物産(株) ナノテク・ニューテク事業創出部 先端技術事業室
プロジェクトマネージャー
宮木義行 (現)アトフィナ・ジャパン(株) 京都テクニカルセンター 主席研究員
芦田勝二 ユアサエイセップ(株) 代表取締役
(執筆者の所属は、注記以外は1998年当時のものです。)
【構成および内容】
第1章 ポリマーバッテリーの開発課題と展望 小山 昇
第2章 ポリマー負極材料
1.炭素材料(リチウムインターカレーション) 高見則雄
1.1 はじめに
1.2 負極特性
1.3 リチウム吸蔵放出反応
1.4 おわりに
2.ポリアセン系素材 矢田静邦
2.1 はじめに
2.2 ポリアセン系物質(一次元グラファイト)
2.3 熱反応を利用したポリアセン系材料の合成
2.4 ポリアセン系有機半導体(PAS) の構造と物性
2.5 リチウム二次電池負極への応用
2.6 リチウムの吸蔵状態と安全性
2.7 キャパシターへの応用
第3章 ポリマー正極材料
1.導電性高分子
1.1 ポリマー正極材料としての導電性高分子 山本隆一,上城 剛,白石貢一
1.2 ポリアニリン 波戸崎 修,小山 昇
1.3 ポリピロール 金子武平,高橋 弘
1.4 ポリアセチレン 白川英樹
2.有機硫黄系化合物 小山 昇,外邨 正
2.1 はじめに
2.2 有機ジスルフィド化合物の反応性
2.3 ポリアニリンによる有機ジスルフィド化合物の触媒作用
2.4 ポリアニリン-有機ジスルフィド復合電極の電池特性
2.5 銅集電体を用いた複合薄膜電極
2.6 ポリカーボンジスルフィド電極
2.7 活性硫黄電極
2.8 おわりに
3.無機電池活物質と導電性高分子の複合化 米山 宏
3.1 はじめに
3.2 ポリピロールと無機化合物との複合体
3.3 ポリアニリンと無機化合物との複合体
3.4 その他の導電性高分子と無機化合物との複合体
第4章 ポリマー電解質
1.ポリマー電解質の応用と実用化 井土秀一
1.1 ポリマー電解質の種類
1.2 ポリマー電解質の特徴
1.3 ポリマー電解質応用の問題点
1.4 ポリマー電池への応用
1.5 おわりに
2 PEO系 井土秀一
2.1 はじめに
2.2 PEO系ドライタイプ電解質のイオン伝導メカニズム
2.3 PEO系ドライタイプ電解質のイオン伝導度の改良
2.4 PEO系ゲルタイプ電解質のイオン伝導度
2.5 PEO系電解質の特徴
2.6 PEO系ポリマー電解質の電池への応用
2.7 おわりに
3.ポリアクリロニトリル(PAN)系ゲル状電解質の機能特性 明石寛之,世界孝二
3.1 はじめに
3.2 ゲル状電解質の合成
3.3 イオン伝導性
3.4 イオン伝導機構への溶液化学的アプローチ
3.5 PAN系ゲル状電解質の電気化学的安定性
3.6 難燃性
3.7 リチウムイオンポリマー電池への応用
3.8 おわりに
4.PMMA系 岩久正裕,小山 昇
4.1 はじめに
4.2 イオン伝導度
4.3 リチウムイオンの輸率
4.4 リチウム電極界面のインピーダンス
4.5 共有結合架橋したPMMA系ゲル電解質
4.6 おわりに
5.ゲル系共重合体 植谷慶雄
5.1 はじめに
5.2 共重合系ゲルSPEのコンセプト
5.3 Battery Engineering Maxellの共重合体ゲルポリマー二次電池
5.4 Bellcoreの共重合ポリマー二次電池
5.5 おわりに
6.電解質と支持塩 森 彰一郎
6.1 はじめに
6.2 電解質への要求性能と材料設計
6.3 電解質の電気化学的安定性
6.4 電解液の熱安定性
6.5 電解質材料
6.6 おわりに
7.アルミナート型高分子固体電解質 重原淳孝,大西 賢
7.1 はじめに
7.2 リチウム単一イオン伝導性高分子固体電解質
7.3 単一イオン伝導体を用いたリチウム二次電池
7.4 ポリアニリン電池への応用例
7.5 おわりに
第5章 セパレーター
1.セパレーターの材料開発と製造プロセス 丹治博司
1.1 セパレーターの機能と特性
1.2 セパレーターの材料開発
1.3 セパレーターの製造プロセス
1.4 今後の展望
2.セパレーターの機能と特性 河野公一
2.1 はじめに
2.2 セパレーターの機能
2.3 特性
2.4 おわりに
第6章 リチウムイオン二次電池におけるポリマーバインダー 菅原秀一
1.はじめに
2.バインダーへの基礎的要求特性
3.電池の製造と性能におけるバインダーの役割
4.バインダーとして検討されているポリマー
5.理想的なバインダー
6.PVDFバインダーの基本特性
7.PVDFの溶解性
8.(PVDF/NMP)溶液の特性
9.(PVDF/NMP)溶液の乾燥と結晶化
10.電解液に対する膨潤性と安定性
11.新規な活物質への対応
12.関連する応用分野
12.1 電気二重層キャパシター
12.2 高サイクル特性リチウムイオン電池
12.3 高分子固体(ゲル)電解質電池
12.4 低インビーダンスセパレーター
12.5 リチウム金属負極二次電池
13.おわりに
第7章 最新のポリマー電池の開発動向
1.フッ素系ポリマーを用いた積層薄型リチウム電池 宮木義行
1.1 市場および技術的背景
1.2 フッ化ビニリデン系ポリマーと特徴
1.3 Bellcore電池の構成と性能
2.超薄型ポリマー電池 芦田勝二
2.1 はじめに
2.2 ポリマー電池の動向
2.3 ポリマー電池の将来展望
内容説明
本書では、ハイテク電池開発にポリマー材料がいかに係わっているかを紹介するため、この部分の開発研究で第一線で活躍中の方々に執筆を願い、その動向を紹介する。その内容は日進月歩のホットな科学技術データに基づいた解説がなされており、今後の材料・技術開発にとって進むべき方向性を示す。
目次
第1章 ポリマーバッテリーの開発課題と展望
第2章 ポリマー負極材料
第3章 ポリマー正極材料
第4章 ポリマー電解質
第5章 セパレーター
第6章 リチウムイオン二次電池におけるポリマーバインダー―二次電池へのポリフッ化ビニリデンの応用
第7章 最新のポリマー電池の開発動向
著者等紹介
小山昇[オヤマノボル]
東京農工大学工学部応用化学科教授を経て、現、東京農工大学大学院教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。