出版社内容情報
★ 近年、いわゆる環境三法が制定され、平成14年にはバイオマス・ニッポン総合戦略閣議決定されるなど、バイオマス資源の利用・処理に対して注目が集まっている。
★ そこで、わが国におけるコンポスト技術における第一人者の方々にご執筆頂き、好評を得た前著を上回る充実した理論と実証を兼ね備えた書籍としてご紹介する!
★ また、国・大学・企業と各方面からバランスの良い構成となっているのは本書だけ!!
【改訂新版の出版によせて】
本書の初版となる『生物系廃棄物コンポスト化技術』は,生物系廃棄物コンポスト化の基礎と実用化に関わる当時としては最新の考え方,知見を提供し,変貌を遂げつつあるコンポスト化技術の実像を多くの人々に理解して頂き,コンポスト化技術の正しい発展に寄与したいという願いの下に編集されました。
その特色は,大学,行政,民間研究者の中から,当時正にコンポスト化技術の研究・開発・実践に取り組んでいた研究者,技術者らによって執筆されているところにありました。内容的には,特に厳選されたトピックス,即ち,コンポスト化反応のメカニズム,反応制御,機能性の拡張等に必要とされつつ欠落の多かった熱力学的挙動に関する熱的・物理的性質を始めとする基礎から臭気対策や開発の実践例まで,ほぼリアルタイムの情報を盛り込んだことは大きな特徴だと言えましょう。
多数の執筆者ご協力で監修者の意図する内容を概ね網羅でき,お陰様で多くの読者の支持を得たことから,この度改訂版出版の運びとなったことを非常に嬉しく捉えております。
1999年の旧版出版以来今日まで,資源循環型社会の構築とバイオマス資源の有効利用に関する機運は大いに高まり,また農業環境関連3法や各種リサイクル法の本格運用が目前のこととなりました。ここで改訂新版発行の実現をみますことは非常にタイムリーであると思います。旧版の出版理念を維持しつつ,この機会に対象を生物系廃棄物からバイオマス資源へと変更し,資源としての重要性に力点をおきました。さらには技術の実用化とその普及に必要度の高い内容を補強すると共に,より理解しやすいように全体を3つの編に構成し直しました。そして書名も「バイオマス資源のコンポスト化技術」とし,これからの流れに合致するものとしまし
た。
バイオマス資源の総合利用を俯瞰しつつ,「循環型社会に位置づけるコンポスト化技術」の進展と普及に本書の内容が大きく貢献できますことを執筆者一同願って止みません。
最後に、私事ながら,監修作業や原稿の整理に協力を惜しまなかった非常勤秘書桑野洋子さんと妻ゆき子に深甚なる謝意を表します。また,改訂新版発行の機会を下さいました(株)シーエムシー出版の皆様に御礼申し上げます。
平成15年秋 木村俊範
【執筆者一覧(執筆順)】
木村 俊範 筑波大学 農林工学系 教授
藤本 潔 農林水産省 大臣官房環境政策課 資源循環室長
西尾 道徳 筑波大学 農林工学系 教授
井上 高一 三洋電機㈱ 技術開発本部 エコ・エネシステム技術開発センター ビジネスユニット バイオシステム研究部 バイオ
技術グループ 課長
岩渕 和則 宇都宮大学 農学部 助教授
東城 清秀 東京農工大学 農学部 助教授
太田 欽幸 広島大学名誉教授 (現 中央大学 理工学部 客員教授)
道宗 直昭 生物系特定産業技術研究推進機構 畜産工学研究部 主任研究員
藤原俊六郎 神奈川県農業総合研究所 農業環境部 部長
羽賀 清典 (独)農業技術研究機構 畜産草地研究所 企画調整部 中小家畜研究官 畜産環境担当
大迫 政浩 (独)国立環境研究所 循環型社会形成推進・廃棄物研究センター
中川 尚治 松下電工㈱ 先行・融合技術研究所 先行技術開発部 環境技術開発チーム
椎葉 究 日清製粉㈱ 第二営業部 エコチーム チームリーダー
鈴木 義治 静岡製機㈱ 環境機器事業部 技術課 課長
広田 弘美 松下電器産業㈱ 松下ホームアプライアンス社 電化住設研究所 主席技師
前田 武己 岩手大学 農学部 農林環境科学科 リサイクル生物生産工学講座 助教授
武田 純一 岩手大学 農学部 助教授
森田 昭 (財)日本環境衛生センター 環境工学部 環境施設課 課長
原田 泰弘 生物系特定産業技術研究推進機構 畜産工学研究部
【構成および内容】
基礎編
第1章 序 論 木村俊範
1.循環型社会とバイオマス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 木村俊範
1.1 バイオマス資源
1.2 バイオマス資源の特徴
1.3 資源循環モデルにおけるバイオマス利用技術
1.4 実用化が望まれるバイオマス利用関連技術
2.コンポスト化とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 木村俊範
2.1 はじめに
2.2 コンポスト化の定義
2.3 資源循環系とコンポスト化
3.各種リサイクル法と国の施策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 藤本 潔
3.1 概要
3.2 持続農業法と環境保全型農業の推進
3.3 家畜排せつ物法による家畜排せつ物の適正管理の推進
3.4 食品リサイクル法とたい肥を用いた土作りの推進
3.5 バイオマス・ニッポン総合戦略と地球温暖化への対応
3.6 おわりに
第2章 コンポスト化の基礎と要件
1.コンポスト化の基礎理論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 木村俊範
1.1 コンポスト化反応の基本
1.2 コンポスト化反応に影響する要因
1.3 小容積リアクターによる解析例
1.4 実用化にあたっての問題点
2.作物生産・土壌からみたコンポスト化の要件 ・・・・・・・・・38 西尾道徳
2.1 コンポストと堆肥
2.2 有機廃棄物の作物生産に対する害作用
2.3 有機物施用,微生物の増殖と作物生育の関係
2.4 各種有機物資材からの無機態窒素の放出パターン
2.5 土壌に対するコンポスト施用の意義
2.6 コンポスト化の要件
第3章 反応解析
1.微生物叢の解析新技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53 井上高一
1.1 主役は微生物叢
1.2 微生物叢の解析新技術
1.3 SSC-PCR法
1.4 生ごみ処理機の菌叢変化測定
1.5 環境制御による菌叢の安定化
1.6 研究開発はこれから
2.コンポスト化および材料の熱的解析 ・・・・・・・・・・・・・・・65 岩渕和則
2.1 熱解析の重要性
2.2 三相系材料としてのコンポスト
2.3 熱解析に必要な熱物性の定義と解説
2.4 コンポスト関連熱物性のレビュー
2.5 家畜ふんコンポストの熱物性
2.6 比熱の違いがコンポスト温度上昇速度へ及ぼす影響
3.コンポスト化材料中の水分移動解析 ・・・・・・・・・・・・・・75 東城清秀
3.1 はじめに
3.2 コンポスト化材料中の水
3.3 副資材の吸水による水分調整過程
3.4 通風乾燥による水分調整過程
3.5 拡散モデルによる水分移動
3.6 水分移動形態の解析
4.材料物性と調整材の意義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・85 木村俊範
4.1 はじめに
4.2 密度(比重)変化
4.3 空隙率の変化
4.4 成型物の破壊試験による結持性評価
4.5 充填槽の圧力損失と比表面積
第4章 脱 臭
1.微生物による脱臭のメカニズム ・・・・・・・・・・・・・・・・・94 太田欽幸
1.1 はじめに
1.2 材料と方法
1.3 結果と考察
1.4 おわりに
2.実用脱臭技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・102 道宗直昭
2.1 はじめに
2.2 悪臭防止法による規制
2.3 脱臭対策
第5章 コンポストの評価
1.コンポスト評価の視点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・114 藤原俊六郎
1.1 コンポスト化の目的
1.2 コンポスト施用の問題点
1.3 コンポスト評価の視点
2.腐熟度の評価方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・120 藤原俊六郎
2.1 はじめに
2.2 現場で行う判定法
2.3 化学成分を分析する方法
2.4 微生物活動を評価する方法
2.5 植物を用いる判定測定方法
応用技術編
第6章 農業・畜産廃棄物のコンポスト化
1.農業関連の有機廃棄物系バイオマス ・・・・・・・・・・・・143 羽賀清典
1.1 食品産業廃棄物
1.2 林産廃棄物
1.3 農産廃棄物
1.4 畜産廃棄物
1.5 その他の有機性廃棄物
2.家畜ふん尿のコンポスト化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・148 羽賀清典
2.1 家畜ふん尿の排泄量
2.2 家畜ふん尿の成分
2.3 家畜ふん尿のコンポスト化のメリット
2.4 コンポスト化の適正条件
2.5 コンポスト化過程における変化
2.6 コンポスト化装置
2.7 家畜ふん尿コンポストの成分
2.8 家畜ふん尿およびその処理物の施用基準
2.9 コンポストの流通利用
第7章 生ごみ・食品残さのコンポスト化
1.生ごみ処理機の開発ニーズと状況 ・・・・・・・・・・・・・163 大迫政浩
1.1 生ごみ処理機の開発・普及を取り巻く状況
1.2 処理装置の分類・原理
1.3 処理装置の設計・維持管理
1.4 生ごみ処理機の評価
1.5 処理装置普及に向けての課題
2.業務用生ごみ処理機の性能基準 ・・・・・・・・・・・・・・178 中川尚治
2.1 生ごみ処理機によるOn Site分散処理型生ごみリサイクル・システム
2.2 業務用生ごみ処理機の現状と性能基準の必要性
2.3 業務用生ごみ処理機の性能基準
2.4 業務用生ごみ処理機の性能基準の主要項目
2.5 結び
第8章 コンポスト化技術の拡張
1.コンポストの機能・利用拡張について ・・・・・・・・・・・・185 椎葉 究
1.1 はじめに
1.2 土木建設発生材の腐食化促進,発生材コンポストの機能性を利用した法面緑化基盤材
1.3 バイオレメディエーションへの利用におけるコンポストの機能性について
2.生分解性素材分解手法としてのコンポスト化 ・・・・・・201 木村俊範
2.1 はじめに
2.2 生分解性素材の概要
2.3 生分解のメカニズム
2.4 実用分解プロセスとしてのコンポスト化
2.5 従来評価法とコンポスト化試験法
2.6 おわりに
第9章 技術開発と応用事例
1.バイオ式家庭用生ごみ処理機の開発 ・・・・・・・・・・・・211 鈴木義治
1.1 はじめに
1.2 バイオ処理機の原理
1.3 装置化の問題点と対応技術
1.4 おわりに
2.乾燥型生ごみ処理機の開発 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・217 広田弘美
2.1 開発のねらい
2.2 開発技術
2.3 製品の仕様
3.家庭用生ごみ処理機の使用実態 ・・・・・・・・・・・・・・・224 前田武己
3.1 家庭用生ごみ処理機の普及の背景
3.2 微生物分解型生ごみ処理機
3.3 乾燥型生ごみ処理機
3.4 処理物の利用と今後の課題
4.ホテル由来の生ごみのコンポスト化 ・・・・・・・・・・・・・230 武田純一
4.1 はじめに
4.2 ホテルにおける生ごみ処理の現状
4.3 ホテルにおける生ごみ処理の事例
4.4 おわりに
5.大規模分別方式による生ごみコンポスト化 ・・・・・・・・237 木村俊範
5.1 背景
5.2 既存プラントの全国調査
5.3 新分別収集法の開発
5.4 施設の設計と建設
5.5 運営・稼動実績
5.6 最近の動向
5.7 おわりに
6.活性汚泥方式,およびバイオガス設備からの余剰汚泥のコンポスト化・・・244 森田 昭
6.1 はじめに
6.2 余剰汚泥の処理
6.3 汚泥の資源化利用
6.4 汚泥のコンポスト化
6.5 コンポスト化施設の管理
6.6 コンポスト化施設の実施例
6.7 おわりに
7.自然エネルギー活用型高品質たい肥化装置 ・・・・・・252 原田泰弘
7.1 はじめに
7.2 太陽光発電システムをめぐる動向およびその特徴
7.3 自然エネルギー活用型高品質たい肥化装置
7.4 今後の展開
総括編
第10章 循環型社会にコンポスト化技術を根付かせるために
1.技術的諸課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・261 木村俊範
1.1 はじめに
1.2 コンポスト化の基礎に関わる技術的課題
1.3 コンポスト化技術の応用面での課題
2.政策的課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・267 西尾道徳
2.1 家畜ふん
2.2 食料由来の廃棄物
2.3 環境保全との調和
2.4 下水汚泥
3.将来展望 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・271 木村俊範