出版社内容情報
★表面の化学的処理・物理的処理・添加剤処理を網羅!
★接着性,潤滑性,帯電防止性,生体適合性などを付与した応用の最新情報を満載!
★表面の解析・分析,評価法までを詳述!
は じ め に
高分子が基本的な構成要素となるプラスチックは,自由な屈曲性があり,また大面積化が容易であることなど使い易い材料である。特に大面積化は,その表面にいろいろな機能を持った部分を集積化することも可能であり,新しいデバイスの出現が期待される。
表面機能の高度化のための表面改質は,高分子材料の表面層自体を改質すること,表面に新しい層を形成することなどが主体となる。そして表面を活性化して新しい層を作りやすくすることなども含まれる。また,表面の活性化は高分子材料自体の応用の範囲を大きく拡大できる。
基本的なことから最近の進歩までを含め,総論編,応用技術編,分析・解析編にまとめた。総論編では,高分子表面改質の基本的な考えと,それに対する改質を化学的技術とと物理的技術の面から記述した。応用技術編では,高分子に機能を持った層として重要なプラズマ重合膜,無機薄膜,金属薄膜を形成する技術を取り上げた。表面自体の改質として接着性,潤滑性,耐擦傷性,帯電性,ぬれ性,防曇性,バリヤー性の制御のための技術とこれからの応用が発展すると考えられる医用材料および光学材料への応用を目的とした改質技術などがまとめられている。分析・解析編としては,高分子表面を解析する最新の技術,印刷適性や接着界面など実際に改質が適用された場合の解析技術の応用および添加剤の適切な応用を進めるために必要な解析手法などをまとめていただいた。
高分子材料のかなり広い範囲にわたる表面改質についての基礎から応用,そして基本から最新の技術を執筆者の方々の御協力でまとめることができた。高分子材料の利用拡大の面でお役に立てるものと確信する。
2001年6月 角田 光雄
執筆者一覧(執筆順)
角田 光雄 文化女子大学 服装学部 教授
森田 慎三 名古屋大学大学院 工学研究科 電子工学専攻 助教授
塚本 忠和 京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 先端ファイブロ科学専攻
山根 秀樹 京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 先端ファイブロ科学専攻 助教授
稲垣 訓宏 静岡大学 工学部 物質工学科 教授
柳原 榮一 神奈川県技術アドバイザー
福島 洋 三菱レイヨン(株) 商品開発研究所 コーティング材料技術センター 主任研究員
村田 雄司 東京理科大学 理工学部 電気工学科 教授
葛良 忠彦 東洋製罐グループ綜合研究所 調査企画室
鈴木 嘉昭 理化学研究所 物質基盤研究部 表面解析室
戸村 知之 岐阜大学 工学部 応用精密化学科 教授
黒崎 和夫 元・富士ゼロックス(株) 分析センター長
黒田 孝二 大日本印刷(株) 技術開発センター 物性分析研究所 所長
合屋 文明 ㈱東レリサーチセンター 有機分析化学研究部 主任研究員
中山 陽一 ㈱東レリサーチセンター 研究部門 主任研究員
構成および内容
【総論編】
第1章 高分子表面改質の基本的な考え方 角田光雄
1 表面改質と応用
2 基本的な考え方
第2章 化学的表面改質技術 角田光雄
1 薬品処理
2 カップリング剤による処理
3 蒸気処理
3.1 ポリエチレンの硫黄化による表面処理
3.2 ポリテトラフルオロエチレンのリチウム蒸気による処理
3.3 フッ素蒸気による処理
4 グラフト化
4.1 処理方法の分類
4.1.1 液相光同時グラフト化処理の例
4.1.2 気相光照射グラフト化処理
4.1.3 液相グラフト化
5 電気化学的な方法
6 添加剤による表面改質
6.1 プラスチックへの添加効果
6.2 表面層の形成
6.2.1 融和性
6.2.2 表面拡散
6.2.3 添加剤の表面構造と経時変化
第3章 物理的表面改質技術 角田光雄
1 光を利用した技術
2 電子線処理
3 イオンビームの利用
4 プラズマの利用
4.1 プラズマの生成
4.2 低温プラズマ処理
4.3 CASING処理
4.4 プラズマジェット処理
4.5 リモートプラズマ処理
4.6 フレームプラズマ処理
4.7 コロナ放電処理
【応用技術編】
第1章 プラズマ重合膜の形成 森田慎三
第2章 無機薄膜の形成 塚本忠和,山根秀樹
1 薄膜調製法
1.1 ゾル-ゲル法
1.2 物理気相成長法
1.2.1 ナイロンフィルムへのケイ素酸化物薄膜の真空蒸着
1.2.2 混合蒸着源を用いた真空蒸着
1.2.3 蒸着装置による薄膜組成
1.2.4 ケイ素酸化物薄膜の耐久性
1.3 化学気相成長法
第3章 金属化処理 稲垣訓宏
1 原理
2 金属化のためのポリマー表面改質
2.1 プラズマグラフト重合法を利用したポリイミド表面の改質
2.2 カップリング反応を利用したポリイミドフィルム表面改質
2.3 水素プラズマによるフッ素ポリマーの表面改質
第4章 接着性の改質 柳原榮一
1 高分子材料の表面
2 表面改質の手法
2.1 洗浄と研磨
2.2 薬品処理
2.3 活性ガス処理
2.4 プライマー処理
2.5 表面処理の管理
3 表面処理の手法とその効果
3.1 薬品処理
3.1.1 ポリオレフィン(PO)
3.1.2 ポリアセタール(POM)
3.1.3 ポリアミド(PA)
3.1.4 ふっ素樹脂(PTFEなど)
3.1.5 ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
3.1.6 ゴム
3.2 プラズマ処理
3.3 プライマー処理
3.3.1 ポリアミド(PA)
3.3.2 ポリオレフィン(PO)
第5章 潤滑性の付与 角田光雄
1 摩擦の現象
2 摩擦に対する種々な要因
荷重/温度/湿度/表面エネルギー
3 高潤滑化の方策
3.1 低表面エネルギー層の形成
添加剤による方法(滑剤)/フッ素系材料による含浸表面層の形成/フッ素系高分子層の形成
3.2 接触面積の低減
第6章 ハードコート材料(耐擦性改質) 福島 洋
1 はじめに
2 ハードコート材料の性能
2.1 耐擦傷性の分類
2.2 ハードコート材料の分類
2.3 透明プラスチックへのUV硬化ハードコート材料の適用
2.4 メタライズドUVハードコート材料
2.5 UV硬化ハードコート材料の耐擦傷性向上
3 機能性付与したUVハードコート材料
3.1 高耐候性を付与したUVハードコート材料
3.2 帯電防止UVハードコート
3.3 防曇性ハードコート
3.4 難焦性UVハードコート
3.5 高屈折率UVハードコート
4 無機系熱硬化ハードコート材料の性能
第7章 帯電防止のための表面処理 村田雄司
1 帯電防止の概念
1.1 電荷漏洩の促進
1.2 接触摩擦帯電の抑制
2 電荷漏洩促進のための表面処理
2.1 金属被覆
2.2 帯電防止剤
2.3 金属以外の導電性コーティング
2.4 超微粒子
2.5 帯電防止性塗料
2.6 プラズマ処理
3 電荷発生特性制御のための表面処理
3.1 表面粗さの制御
3.2 コーティングによる帯電特性の制御
3.3 プラズマ処理
第8章 防曇性の付与 角田光雄
1 基本的な方法
2 防曇性付与の方法
2.1 化学的処理の応用
2.2 物理的処理
3 防曇性付与における必要な評価項目
4 種々な例
4.1 ポリオレフィン
4.2 アクリル系樹脂
4.3 ポリカーボネート
4.4 塩化ビニル
4.5 塗布方法による防曇化
第9章 バリヤー性の付与 葛良忠彦
1 包装材料におけるバリヤー性
2 バリヤー性付与の方法
2.1 多層化による方法
2.2 表面改質による方法
3 樹脂系コーティングバリヤー材
3.1 PVDCコートフィルム
3.2 PVAコートフィルム
4 アルミ蒸着フィルム
5 シリカ・アルミナコートフィルム
6 PETボトルのコーティング技術
第10章 医用材料の表面 鈴木嘉昭
1 生体適合性
1.1 生体適合性とは
1.2 血液適合性
1.3 組織適合性
1.4 その他医療材料に必要とされる条件
2 表面改質による生体適合性の付与
2.1 化学的処理
2.1.1 ハイドロゲルの利用
2.1.2 排除体積効果の利用
2.1.3 生理活性物質の固定化
2.2 物理的処理
3 イオンビーム照射による生体適合性の制御
3.1 イオンビーム照射(イオン注入法)
3.2 技術的問題点
3.3 構造変化
3.4 細胞接着制御
3.4.1 細胞接着表面
3.4.2 細胞非接着表面
3.5 血小板粘着制御
3.6 人工臓器への応用
3.6.1 小口径人工血管への応用
3.6.2脳動脈瘤治療用ガイドワイヤーへの応用
3.6.3 その他の医療器具への応用
4 医用材料の表面改質の今後の展望
第11章 撥水・ぬれ性の向上 戸村知之
1 低表面エネルギーセグメントの導入による撥水性の付与
1.1 低表面エネルギーセグメント
1.2 改質したエポキシ樹脂表面のXPS分析
1.2.1 光電子の脱出角変化法
1.3 ソックスレー抽出によるMGFの保持力の検討
1.4 改質したエポキシ樹脂ぬれ特性
1.4.1 ぬれの臨界表面張力
1.4.2 動的接触角(DCA)による改質されたエポキシ樹脂表面の撥水・撥油性の評価
1.5 改質されたエポキシ樹脂の感圧接着剤のはく離試験
2 高分子固体へのぬれ性の付与
2.1 表面処理
2.2 親水性セグメントの導入によるぬれ性の付与
第12章 光学的な応用 角田光雄
1 屈折率
2 光の透過
3 光電変換
4 光電特性の基本となる電子的性質
4.1 化学修飾(有機導電材料の表面グラフト化)
4.2 導電塗料コーティング
4.3 含金属プラズマ重合膜の形成
【分析・解析編】
第1章 高分子の表面解析 黒崎和夫
1 表面または断面を見る
1.1 電子顕微鏡
1.2 走査線型プロープ顕微鏡
2 表面層の元素分析を行う
2.1 第一法
2.1.2 加速されたイオンをプロープとする場合
2.2 第二法
3 表面層の分子を識別する
3.1 振動スペクトルからの情報
3.2 質量スペクトルからの情報
4 表面の配向を調べる
4.1 特定官能基の配向
4.2 分子鎖の配向
第2章 印刷・湿布適性の解析と応用 黒田孝二
1 印刷・塗装製品と表面改質
1.1. 塗膜表面に求められる機能
滑り/濡れ/接着/転写/易剥離性(離型性)/帯電防止/耐久性
1.2 表面の改質に用いられる処理技術
1.2.1 光エネルギー
1.2.2 熱エネルギー
1.2.3 電磁波エネルギー
1.2.4 化学処理
1.2.5 機械処理
1.2.6 コーティング
2 印刷製品の表面・界面解析技術
2.1 原反表面状態評価技術
2.1.1 濡れ試験法
2.2 表面・界面課題解決への分析技術の応用
2.3 表面・界面の機能発現とその要因解析
2.3.1. 10~100Åの深さ領域の機能と解析
2.3.2 10Åより浅い領域の機能と解析
2.3.3 0.1μmより深い領域の機能と解析
2.3.4 100Å~μm領域の役割と解析
2.4 今後の表面機能解析の方向
2.4.1 プロセスの解析技術の必要性
第3章 高分子添加剤の解析 合屋文明
1 添加剤分離技術
1.1 抽出法
1.2 遠心分離法
1.3 クロマト分離
2 添加剤の分析例
2.1 可塑剤の分析
2.2 滑剤
2.3 酸化防止剤,紫外線吸収剤,光安定剤の分析
2.4 光開始剤,光酸発生剤の分析
2.5 シランカップリング剤,変形シリコーン
2.6 硬化剤・硬化促進剤
2.7 加硫剤・加硫促進剤
2.8 帯電防止剤・防曇剤などの界面活性剤
第4章 接着界面の解析 中山陽一
1 分析手法
2 解析例
2.1 包装材料
2.2 ラミネート鋼板
2.3 炭素繊維/樹脂複合材料
2.4 水素終端シリコン基板上の金属フタロシアニン結晶性薄膜
2.5 歯科接着剤とヒドロキシアパタイトにおける化学結合の確認