出版社内容情報
刊行のねらい
有機ケイ素化合物の開発は、今まではSi‐O結合のシリコーンがその中心であったが、最近になってSi‐Si結合を持つポリシランの合成の研究が進み、新規有機化合物開発の可能性がにわかに高まってきた。
今まさに“第二の有機物”とも言われるように、ポリシランを中心としたケイ素による新しい有機化学の体系が発展しようとしているのである。 本書は、これら有機ケイ素ポリマーに関する研究開発の現状と展望を、基礎的および工業的両面からの視点でまとめた技術レポートであり、第一線研究者による貴重な情報が収められている。
執筆者一覧(執筆順)
(所属・肩書は1989年当時のものです。)
熊田 誠 京都大学名誉教授
坂本 健吉 東北大学 理学部
吉良 満夫 東北大学 理学部
松本 信雄 日本電信電話(株)基礎研究所
加部 義夫 筑波大学 化学系
持田 邦夫 学習院大学 理学部
大中 恒明 日本曹達(株)機能製品本部
直井 嘉威 有機合成薬品工業(株)東京研究所
杉山 寿 (株)日立製作所 生産技術研究所
横山 正明 大阪大学 工学部
早瀬 修二 (株)東芝 総合研究所
岡村 清人 大阪府立大学 工学部
市川 宏 日本カーボン(株)研究所
礒田 武志 東燃(株)総合研究所
野末 幾男 (株)神戸製鋼所 技術開発本部
白幡 明彦 トーレ・シリコーン(株)研究開発本部
構成および内容
【基 礎 編】
第1章 ポリシラン化学の発展 熊田 誠
1 はじめに
2 低分子オルガノポリシラン
2.1 合成と反応例
2.2 紫外吸収特性に関する初期の研究
3 高分子オルガノポリシラン
3.1 発見のきっかけ
3.2 紫外吸収特性
3.3 光分解
4 最近における他の二、三の研究例
4.1 新しいタイプのポリマー
4.2 ポリシランの新規合成法
第2章 ポリシランの化学
1 高分子量ポリシランの合成 坂本 健吉
1.1 クロロシランのナトリウムによる縮重合反応
1.2 マスクされたジシレンのリビングアニオン重合反応
1.3 ヒドロシランの遷移金属触媒による脱水素重合反応
2 ポリシランの光反応 吉良 満夫
2.1 はじめに
2.2 鎖状および環状ペルアルキルポリシランの光反応
2.3 π系と直接結合したポリシランの光反応
2.4 ポリシランを電子供与体とする光誘起電子移動反応
2.5 高分子量ポリシランの光反応
3 その他の反応 坂本 健吉
3.1 酸触媒によるポリシラン骨格の転位反応
3.2 Si‐Si結合の開裂反応
3.3 ポリシランの熱分解
3.4 ケイ素上での官能基変換
第3章 ポリシランの物性と機能
1 ポリシランの電子状態 松本 信雄
1.1 電子状態の決定要因
1.2 σ共役によるバンドの形成
1.3 バンド構造の持つ意味
1.4 共役領域の拡大(骨格次元)
1.5 立体構造の影響
1.6 不均一骨格の影響
1.7 側鎖基の影響
1.8 その他の影響
2 ポリシランのNMR(最近の手法) 加部 義夫
第4章 ポリゲルマンの現状と展望 持田 邦夫
1 はじめに
2 ポリゲルマンの合成法
3 ゲルマニウム‐ゲルマニウム結合の性質と反応
2 ポリゲルマンの展望
【応 用 編】
第1章 ポリシランの工業的製造と反応
1 ポリジメチルシランとポリシラスチレン 大中 恒明
1.1 ポリジメチルシラン
1.2 ポリシラスチレン
1.3 おわりに
2 新規ポリシラン 直井 嘉威
2.1 はじめに
2.2 ポリシランの合成法
2.3 新規ポリシラン
2.4 おわりに
第2章 光関連材料への応用
1ポリシランおよび新規有機ケイ素系ポリマーのフォトリソグラフィーへの応用 杉山 寿
1.1 はじめに
1.2 リソグラフィー技術と最近の動向
1.3 ポリシラン の光反応とレジスト材料への応用
1.4 新規有機ケイ素系ポリマーのレジスト材料への応用
1.5 おわりに
2 ポリシランとレプログラフィー 横山 正明
3 ポリシランを開始剤とするラジカル反応 早瀬 修二
3.1 はじめに
3.2 モノマーへの溶解性
3.3 UV吸収
3.4 UV吸収の退色
3.5 量子収率
3.6 重合結果
3.7 その他のポリシランが関与する光ラジカル反応
第3章 セラミックス原料への応用
1 ポリシランからのプレセラミックスの製造 岡村 清人
2 ポリカルボシランの製造と応用 市川 宏
3 超耐熱材料炭化ケイ素繊維の製造 市川 宏
4 窒化ケイ素繊維の製造 礒田 武志
4.1 はじめに
4.2 プリカーサー法以外の窒化ケイ素繊維製造法
4.3 各種プリカーサー法について
4.4 ペルヒドロポリシラザン法による高純度窒化ケイ素繊維製造法
4.5 プリカーサー法による窒化ケイ素繊維製造法の今後
第4章 導電材料への応用 野末 幾男
1 はじめに
2 ポリシランのエネルギー準位とポリシラン鎖長との関係
3 ポリシランの導電性
4 おわりに
第5章 ポリシロキサンおよびその他の含ケイ素ポリマーの開発動向 白幡 明彦
1 はじめに
2 ポリシロキサンの概要
2.1 ポリオルガノシロキサンの構成単位
2.2 シロキサン骨格の合成
2.3 シロキサンの構造と物性
3 半導体微細加工に用いられるシロキサン材料
4 有機材料と組み合わされるシロキサン材料
4.1 有機変性シリコーン
4.2 液晶ポリシロキサン
4.3 シロキサン‐有機コポリマー
内容説明
本書は、最近関心が集まっているポリシランについての現状を、それぞれの専門家によって紹介、解説したものである。
目次
基礎編(ポリシラン化学の発展;ポリシランの化学;ポリシランの物性と機能;ポリゲルマンの現状と展望)
応用編(ポリシランの工業的製造と応用;光関連材料への応用;セラミックス原料への応用;導電材料への応用;ポリシロキサンおよびその他の含ケイ素ポリマーの開発動向)