内容説明
愛の悲喜劇を完璧な筆致で描く英国不倫小説の極致!それは恋なのか、臓腑をえぐる欲望なのか?ロレンス、ジョイスなど20世紀を代表する作家を世に送り出した名編集者にして英国モダニズムの巨人、本邦初登場。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
106
唸るしかない。夫婦のあり方や不倫や浮気に関する出来事、いわば常に扱われてきた永遠の凡庸なテーマとも言えるものを、こうもうまく書き記したとは。浮気を許せない妻が、周りに対して自分を取り繕うとすればどのようになるのか。おそろしく滑稽で悲しく切ない話である。どの側面を見ても、誰の視点から見ても、そうなのだ。夫婦において肉体関係が存在しないとはどういうことか、仕事人として、社会人として立派であることと、いい夫であることはイコールでない。そして、立派な妻は、いい妻にはなりえない。滑稽で見事な悲劇的心理劇。2015/12/07
まふ
104
米国の友人が英国の友人夫婦をめぐる混然とした愛情関係を解きほぐすように語る恋愛物語。夫婦2組を含めても6人の男女しか登場しないのに、その愛情関係はこんがらかって縺れに縺れる。4名の女性は病死、自殺、発狂、離婚と各それぞれ惨憺たる結果であり、小説だから書ける「かくも悲しい」終局だと思う。語り手の米国人の書きぶりもどこか尋常ならざる(信用できない)書きっぷりであり、全体をどう捉えるか難しい不思議な小説であった。G507/1000。2024/05/10
NAO
74
イギリスのカントリー・ジェントルマンエドワード・アシュバーナム夫妻と、アメリカ人大富豪ジョン・ダウアル夫妻の保養地での付き合いと、9年後に明らかになった事実。 語り手ジョンはエドワードと妻の関係を知らなかったというが、彼は信用ならない語り手だ。彼の語りをどこまで信用するかで、この四人の人物像や関係性は大きく変わってしまいそうだ。はたして、ジョンは、その語りを素直に受け取ったとおりの「間抜けで気の毒な寝取られ男」なのだろうか。アシュバーナムの妻を冷たい女だというジョンは、彼女をそう批判できるのか。2020/12/05
tona
6
フランス文学のよう。一言で言えば2人組の夫婦を中心とした「不倫」をめぐる物語だが、到底信頼できそうにない語り手の行きつ戻りつする語りに散々振り回され続けるのが本当に面白い。それにしても、まったくもって誰にとって「悲しい話」なのか。2014/12/10
きりぱい
5
登場人物紹介ですでに真相がほのめかされているのに、行きつ戻りつする語りがかなりまだるっこしく、なかなか、かくも悲しい話のパッションたる部分を楽しませてくれない。男の単純さ、感傷的な部分、女の思い込みの強さ、残酷さがずれて絡み合い、かくも悲しい話というより、逆に知らなくて幸せだったかも?のようなかくも気の毒な男の印象を残す。2010/01/27