出版社内容情報
文化経済学の第一人者がジョン・ラスキン、アマルティア・センらの研究成果を、二宮尊徳や行基らの事蹟にも投影させ、引き出しつつ、一人ひとりの足下からの地域再生構想を描いた著者の文化経済学研究の集大成。
いまこそ、金銭的価値・快楽優先のまちづくりから脱却するときだ。
2011年3月11日……この日を境にして、近代の「人間はエゴの塊(かたまり)であって何が悪い」という利己主義から、根本的に脱却するべきときがやってきた。
日本という国は、政治家や権力者に頼らず、民間の篤志家や宗教家、商人・経済人が、地域固有の農民文化、工人文化、福祉文化、水利文化、道をつくる文化、道徳文化、などを生かし、一人ひとりのもつ潜在的な力量を生かして、地域再生を果たしてきた
国である。
その歴史と蓄積をふまえ、物事の背景にある「固有性」と、自然と人間の「共生化」に注目して、自然の個性と人間の個性が互いに高めあえる社会を再構築すべきだ。
本書は、わが国文化経済学の第一人者がジョン・ラスキン、アマルティア・センらの研究成果を、二宮尊徳や行基らの事蹟にも投影させ、引き出しつつ、一人ひとりの足下からの地域再生構想を描いた著者の文化経済学研究の集大成。
第一部 大災害からの復幸 その思想と行動
第一章 “知識結い”による自己変革と“地域再生”
第二章 東日本大震災とこれからの日本
第三章 二宮尊徳における地域再生構想と実践の道
第四章 地域再生構想の実践における人間の疎外と発達
第二部 地域再生と産業・福祉文化 現代文化資本論
第五章 人間固有の「人・場」を活かす文化資本経営
第六章 生活文化産業の生成と発展
第七章 文化的価値の蓄積
第八章 アダム・スミスのコモン・ストック論と商人
結論と展望 福祉社会の構築と家族共同体・コミュニティ再生活動
【著者紹介】
1933年、大阪市生まれ。 京都大学経済学部卒業。京都大学名誉教授。経済学博士。市民大学院(文化政策・まちづくり大学校)世話人代表。国際文化政策研究教育学会会長。主著に『文化と固有価値の経済学』岩波書店、『財政学』岩波書店、『財政思想史』有斐閣、『日本財政論』実教出版など多数。経済学、財政学の研究によって、文化経済学など新たな学術を発展させ、その成果を学生や大学院生、社会人再教育に生かしてきた。研究教育の功績により2012年4月に瑞宝中綬章を受章。
内容説明
いま、日本経済は、政府依存の大規模量産時代から、地域分散型の小規模・自立経営の時代へと転換しつつある。本書は「文化資本の経営」を手がかりとし、地域自立を実現した行基、空海、二宮尊徳らの仕法、知識結、推譲、などの思想を深め、コモン・ストック、次世代への継承、倫理的な消費者などの概念を総合化した。日本経済学を構想しつつ、世界経済再生の道を示す。
目次
第1部 大災害からの復幸―その思想と行動(“知識結”による自己変革と“地域再生”―阪神淡路大震災における絆の再生・“貧困底”からの人間発達;東日本大震災と地域再生―「創造的復興」から「人間復興」へ;二宮尊徳における地域再生構想と実践の道―一円融合の理;地域再生構想の実践における人間の疎外と発達―商人論における二宮尊徳とアダム・スミスを中心として)
第2部 地域再生と産業・福祉文化―現代文化資本論(地域固有の「人・場」を生かす文化資本経営;生活文化産業の生成と発展―ラスキンから現代まで;文化的価値の蓄積―文化による“まちづくり”;アダム・スミスのコモン・ストック論と商人―永続的発展の経済学;結論と展望‐福祉社会の構築と家族共同体・コミュニティ再生活動―地域における基礎的潜在能力の形成と地域文化の創造的再生)
著者等紹介
池上惇[イケガミジュン]
1933年、大阪市生まれ。京都大学経済学部卒業。京都大学名誉教授。経済学博士。市民大学院(文化政策・まちづくり大学校)世話人代表。国際文化政策研究教育学会会長。研究教育の功績により2012年4月に瑞宝中綬章を受けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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