内容説明
エリザベス・ボウエン(1899~1973)はアイルランドに生まれ、イングランドによる植民地支配から独立する祖国を見守った作家である。作家ボウエンを誕生させたのはアイルランドとイングランド、そして二度の世界大戦であり、二つの祖国を取り囲む歴史は彼女のフィクションの源泉といえよう。本書では、戦中を生き抜いた女性作家ボウエンの複雑な一面を描出する。幼少期より発症した吃音、広壮なボウエンズ・コートでの生活、第二次大戦中はアイルランドに渡り、中立策を取ったアイルランドの内情をチャーチルに報告、夫アランとの結婚生活はボウエンにとって安定した日々を意味したが、複数の婚外関係が存在した…。ヴァージニア・ウルフ、メイ・サートンをはじめとする文学上の交友関係も詳述され、現実と虚構を豊かに行き来した作家の姿を浮かび上がらせる。ボウエンの生涯と作品を深く読み込み、難解とされる文体の謎にも迫る濃密な文芸批評。
目次
第1章 はじめに
第2章 変化
第3章 想像の領域
第4章 アウトサイダー
第5章 恋愛と恋人たち
第6章 戦争のスナップショット
第7章 芸術と知性
第8章 さまようまなざし
第9章 過去から読む
第10章 晩年のライフ・コラージュ
第11章 おののく心
著者等紹介
ロレンス,パトリシア[ロレンス,パトリシア] [Laurence,Patricia]
米国ニューヨーク市立大学名誉教授。越境するモダニズム、ブルームズベリ・グループ、女性作家について幅広く執筆
太田良子[オオタリョウコ]
1939年東京生まれ。都立西高第九期生。東京女子大学・同大学院修了。ケンブリッジ大学訪問研究員。東洋英和女学院大学名誉教授。英米文学翻訳家。日本文藝家協会会員。日本基督教団目白教会会員。2013年、エリザベス・ボウエン研究会をたちあげ、その研究と紹介に力を注ぐ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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