内容説明
記号論学者であり、世界的大ベストセラー小説『バラの名前』の作者でもあるエコは、レーモン・クノーの『文体練習』を自らイタリア語訳することで、早くから翻訳方法論を実践してきた。本書は、エコの記号論的翻訳論のほか、『バラの名前』の各国の翻訳者たちの方法論や、翻訳の出来映えを論じた諸論文を収録し、エコとエコ作品の翻訳論を集大成したものである。
目次
1 エコの翻訳論(翻訳研究への記号論的アプローチ;レーモン・クノー『文体練習』(イタリア語版)の序説
『シルヴィー』再読
レーモン・クノー、ウンベルト・エコと『文体練習』―創作と翻訳の詩的言語)
2 エコ作品の翻訳論(会議への基調発言;作家の演技に居合わすということ;写字生の独り言;三人による翻訳―ウンベルト・エコ作『バラの名前』をオランダ語に翻訳する技法 ほか)
感想・レビュー
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roughfractus02
4
記号論から見た翻訳とは、コードの不確定さ(過剰と過小)を惹起する記号の本質に位置し、発信者と受信者、信号の種類、信号の着信点での反応の可変性をもたらす契機だろう(cf.『記号論Ⅱ』)。本書は、著者のレイモン・クノー『文体練習』の翻訳実践や自身の著作『薔薇の名前』の他言語の翻訳に対する論評等の4本に加え、邦訳者の論も含めた他の論者の翻訳論を併せた計21本から成る。本質としての翻訳は、バベル以後に言語的混乱を見出してそれ以前のユートピア世界を希求する考えを退け、読むべき記号に満ちたこの世界に知の向きを変える。2019/01/21
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- 和書
- 部落史紀行 (増補)