感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
90
表題作と「バイセクシャル」を収録。「バイセクシャル」の方は平凡で拍子抜けするが、「蟻の精神病院」は異様な迫力がある物語。題の通り蟻が出入りする病院が登場して、そこで働く拝金主義者の医者たちの姿が厳しく糾弾されている。統合失調症で苦しんだ作者の経験が織り込まれているのかもしれない。現実と幻想が入り混じった病院の描写はシュールでありながら、現実の世界とどこかでつながっており、読者を惹きつける。草間さんの作品の写真も多く収録されており、それが小説と一体となって活字の世界を広げているところが面白い。2014/02/24
くろり - しろくろりちよ
3
表参道ヒルズのグッズ店『SandO』で狂気的に美しい水玉に魅せられて、その場でグッズを買い込んで、その後フと、「これを創った人の物語りはどんななんだろう」って思って本を手にとって。たくさんの作品の写真も散りばめられた、草間彌生を知るにはとてもいい作品。「蟻の精神病院」「バイセクシャル」の二作品。作者がどんな目でこの世界を見ているのか。蟻の社会でも、ニューヨークでも、草間彌生が感じている細かい差異に触れられる。その細かい差異が気泡となり水玉となり彼の作品を彩っているのだろうな。2011/12/08