内容説明
巡り来る永遠の夏の日に。昭和二十年、“敗戦の夏”前後。集団疎開した四万温泉の村。日増しに濃くなる戦争の影。同級生との友情、葛藤、諍い、そして別れ―。皇国少年少女たちのあの夏の日々を、そして成長の日々を、類いまれな記憶力と無垢なまなざしで回想。形而上作家と畏怖される閨秀の自伝的、いわば“地下室の手記”ともいうべき魂のドキュメント。
目次
1 四万川とひもじさ
2 食事と温泉とモンペ
3 二階の女室長
4 「練鑑ブルース」と「お山の杉の子」
5 虱と高血圧
6 山野草と血圧計
7 火の手
8 火のなかで
9 火元
10 開墾と川の記憶
11 脱走少年と老人
12 桃子のお手玉
13 父がくる
14 洋子の日記、奈々子の書取り
15 庫裡と蚕と山門〔ほか〕