感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スミス市松
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サン=ジョン・ペルスやヴィクトル・セガレンの訳詩でも知られる有田忠郎最後の詩集。「夢の鏡」から始まり「夢の書物」で終わる全十九篇の詩からは、最晩年の作品ということもあり「別れ」「死」といったイマージュが顔を覗かせる。だが、それら哀切なイマージュが自然の様々な光彩と交じり合う瞬間、言葉は夜明け前の夢の去り際のごとく最期の限りない美しさを見せる。「夏の日は/いつまでも傾かない/光が灰のように降ってくる」――日が暮れてもなお降りそそぐ夏の埃っぽい光のことを、或る作家が「八月の光」と名づけたことをふと思い出した。2016/02/11
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