感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nbhd
27
あのイタロ・カルヴィーノ大先生が絶賛。勝手にキャッチコピーを付けちゃうのなら「グアテマラの筒井康隆」がふさわしいかな、と。いわゆる諷刺とか批判精神なんて言葉が感想のアタマにくるような作品なのは確かだけれど、そんなのはいちどカッコに閉じてしまって、「原文でわずか7語の世界一短い小説」「干し首ビジネスとその顛末」「犬とハリネズミが決闘する短編小説をずっと書けないでいる男」とか珍妙だけど“なんか、わかるぅ~”の快感に浸ればよきかな。著書の翻訳のうち、もう一冊のほうにも手をのばしたくなる、のっぴきならない短編集。2016/12/08
スミス市松
20
グアテマラの作家アウグスト・モンテロッソ最初の短篇集。奇を衒ったストーリーも、文章の軽妙さも、痛烈な皮肉も、すべては著者の開かれた作風によるところが大きい。世界でいちばん短い小説として名高い「恐竜」も含めて、多くの作品が読者の側の想像力を信じて問いかけるようなスタイルをとっている。軽やかで楽しい短篇集だった。なんといっても本書の白眉は様々な着想に振り回されて奔走し、たったひとつの短編すら書き終えることのできない作家を描いた「レオポルド(その作品)」で、私はここにバートルビー文学の真髄を見た気がする。2016/02/11
ふるい
9
世界で一番短い短編「恐竜」をはじめ、想像力を掻き立てられるユニークな短編集。「ミスター・テイラー」と「日食」は前に何かのアンソロジーで読んだと思う。当時の政治情勢に対する皮肉が効いた作品も良かったが、個人的には延々と書きあぐねる自称作家の男を描いた「レオポルド(その作品)」と、かつて詩を志した中年の文学教授が、詩人志望の弟子の指導に悩む「全集」が好み。2021/12/26
maimai
7
先日読んだ『ラテンアメリカ怪談集』で、「ミスター・テイラー」が面白かったので、それまで名前も聞いたことがなかったこの作家の本を試しに読んでみた。「ミスター・テイラー」はこの本にも収録されているが、訳が違うとこうも印象が違うものか。僕は『ラテンアメリカ怪談集』所収の井上義一訳の方が好き。『全集 その他の物語』は全体に面白かったけれど、思ってたのとはだいぶ違った。2019/04/04
tera
7
どれもなんとなくとぼけた雰囲気で味わい深い短編集。中でももっとも引き合いに出される一編「恐竜」は原文でわずか七語。その性質上読者の想像力により完成される文学というものの一つの到達点かもしれない。2017/01/08