内容説明
より良い世界を求めて闘い、斃れた人びとのための墓標。ボルヘスの『汚辱の世界史』への「対本」として―オマージュとして、かつアンチテーゼとして構想された7つの連作短編集。スターリン時代の粛清に取材しながら、全体主義社会での個人の苦闘を描く。
著者等紹介
奥彩子[オクアヤコ]
共立女子大学教授。専門はユーゴスラヴィア文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヘラジカ
40
闇に生きて闇に死んだ傑物たちの圧縮された伝記。短いページ数にこれでもかと情報量が詰め込まれているので、ある意味ではジェットコースター的に目まぐるしく展開が変わる。勿論、疲労度もそれ相応のもの。これは長篇で読みたいと思う一方、この短さだからこそ暗い”煌めき”を味わうことが出来るのだとも言える。本を手に取った時の印象とは真逆の重い読書だった。しかし、これもまた読書の面白さだ。2025/02/02
rinakko
7
濃ゆい短篇集だった。重苦しい内容でも摑まれた。“ボルヘス『汚辱の世界史』への対本”とのことで、なるほど…と。歴史の表舞台には名の挙がらない裏のヒーロー(アンチヒーロー)たちの話であり、概ね史実の再話であるらしいところで擦っている。主人公たちは、手持ちの才覚や運しか頼みにならない状況で、己の意志を曲げずに暴力的な時代を生き抜こうとする。“いま、世界で起きていることとしても読みうる” という訳者あとがきの言葉に、はっと胸を衝かれた。とりわけ表題作や「機械仕掛けのライオン」「めぐる魔術のカード」に引き込まれた。2025/02/14