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内容説明
ベルンハルトによる自伝的五部作の出発点―ザルツブルクでの学校時代は、作家自身にとってどのようなものだったのか。日々暮らした寄宿舎を統べていたナチズム、そしてカトリシズムの抑圧的機構を弾劾し、故郷ザルツブルクへの悪罵を書き連ねながら、「人生のもっとも凄まじい時代」の回想のなかに、自らを形成した「原因」を探っていく問題作。
著者等紹介
ベルンハルト,トーマス[ベルンハルト,トーマス] [Bernhard,Thomas]
1931‐1989。20世紀オーストリアを代表する作家のひとり。少年時代に、無名の作家であった祖父から決定的感化を受ける。音楽と演劇学を修めつつ創作をはじめ、1963年に発表した『凍え』によってオーストリア国家賞を受賞。一躍文名を高める一方で、オーストリアへの挑発的言辞ゆえに衆目を集めた。以後、小説・劇作を数多く発表。1988年に初演された劇作『英雄広場(ヘルデンプラッツ)』でオーストリアのナチス性を弾劾するなど、その攻撃的姿勢は晩年までゆるがなかった。1089年、58歳で病死
今井敦[イマイアツシ]
1965年生まれ。中央大学文学部卒業、中央大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。1996年から2000年にかけてオーストリアのインスブルック大学に留学、同大学にて哲学博士(Dr.Phil.)取得。龍谷大学教授。専攻は現代ドイツ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
123
こんなに美しい少年の写真を表紙に持つ作品の内容は、酷く鬱屈している。オーストリアのザルツブルクは、群を抜いて自殺率が高いらしい。特にギナジウムに通う少年たちはよく自殺をした。作者は飛び降りた若者の死体まで街で何度か目にしている。彼らのお葬式は簡素で、お墓もひどかったカトリックにおいて自殺は厳禁だからだ。ナチスの台頭がもたらす雰囲気もその一因であったようだ。作者も何度も試みたらしい。助かったのは、15歳で学校をやめて、職業訓練所に向かったからだ。自伝的五作品の第一番目。『寮生が自殺すると、寮長はその度に2018/03/23
NAO
70
【月イチテーマ⠀学校・会社・組織】ザルツブルクでの学校生活を描いた、ヘッセの『車輪の下』を思い出させる自伝的小説。作者は自分という人間形成の原因が、祖父による教育とザルツブルクでの学校生活だと考えている。祖父はギムナジウムに入れなかったためにドイツの教育制度を徹底的に嫌い、それを孫に言い続けたのに、ある日突然前言を百八十度翻して孫をギムナジウムに行かせる。だが、祖父からギムナジウムの悪口、教育制度への批判を聞かされて育った少年が、学校生活に馴染めるわけがない。祖父は、そんなことも考えなかったのだろうか。2021/01/30
かふ
22
ベルンハルトの本はけっこう積読になっていたので、集中的に読もうかと思って。まず手始めに自伝5部作というやらを。音楽祭で有名なザルツブルクの裏側というような。ナチス時代と入れ替わったカトリックのギムナジウムの寄宿学校のネガティブな記憶。軍国教育のナチス的教官と敗戦後もカトリックがそれに入れ替わったような教育システムの青春時代。絶えず虐められる弱者が生贄となるとういうような。その中で祖父の反権力と祖母の思い出などが多少明るさがあるが、祖母が精神病院に入れられる状況とか今の日本にも通じるのかもしれない。2025/01/12
渡邊利道
8
自伝五部作の一。作者が十三歳から十六歳になるまでのザルツブルグでの寄宿舎時代のメモワール。徹底して人間を破壊し、時には自殺に追い詰める中等教育への呪詛に満ちた極めて濃密で美しい文章。空襲が激化し、大規模な破壊と死で全てがむき出しになった街の爽やかな美しさはただ事ではなく、戦前のナチスが戦後カトリックに入れ替わっただけの学校生活の陰惨さはひたすら抑圧的。2019/03/08
TOKKY
5
大学生のときに『消去』を途中まで読んで、すごく面白かった気がするけど挫折したトーマス・ベルンハルトに再挑戦ということで、まずはとっつきやすい自伝的五部作の一作目から。 もう全てにおいて書かれてあることの理屈がストンと自分の腑に落ちまくり、思考回路の点で言えばほぼ同じく、相応しい言い方が見つからないがトーマス・ベルンハルトという人間が自分の完全な上位互換の感覚すら覚える。書いてあることを間に受けて幸せにはならないが、この上なく相性が良いので心地が良い。流石に時折り辛辣すぎて笑えるけど。2024/12/19
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