内容説明
コロンビア‐アメリカ合衆国間での麻薬取引を背景に、英雄に憧れたひとりのコロンビア人パイロットと、彼の妻となるアメリカ平和部隊隊員の過去を、コロンビア麻薬戦争の時代を体験した語り手が再構築する。
著者等紹介
バスケス,フアン・ガブリエル[バスケス,フアンガブリエル] [V´asquez,Juan Gabriel]
1973年、コロンビアの首都ボゴタに生まれる。ロサリオ大学で法学を学び、その後フランスに留学、パリ大学でラテンアメリカ文学を専攻して博士号を取得した。2004年に『密告者』、2007年に『コスタグアナ秘史』を刊行。3作目になる『物が落ちる音』(2011)でアルファグアラ賞を受賞、同書の英訳によって2014年に国際IMPACダブリン文学賞も受賞し、国際的な評価が高まっている
柳原孝敦[ヤナギハラタカアツ]
1963年生まれ。東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程単位取得退学。現在、東京大学大学院人文社会系研究科准教授。専攻はスペイン語文学・文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かもめ通信
22
コロンビアの大学教員を語り手に一人称で明かされる物語は、1990年代半ばに語り手が体験したごく個人的な出来事で構成されている。語り手はとても繊細な息づかいで、それいて率直な告発を含みながら物語を語りあげる。そこにはラテアメ文学の響きに読者が想像しがちな匂いはあまりない。あるいはその点を物足りなく思う読者もいるかもしれないが、物語は確かに読み手をコロンビアへと誘う。彼の地は、秘境でも失われた大地でも魔術が巣くう街でもなく、大国と私利私欲に走る一握りの者たちの思惑に翻弄された人々が暮らす土地ではあったけれど。2016/06/27
hiroizm
16
ダブリン文学賞受賞作と知って読書。ビリヤード仲間の中年男性と銃撃事件に巻き込まれ、九死に一生を得た大学講師の主人公が、そのPTSDに苦しみながら亡くなった中年男性の過去を追う。そして彼の生い立ち、その妻の米国女性と娘の苦悩の生涯を通して、現代コロンビアの一側面をも描いた重層的な小説。大規模な私設動物園を作って一般公開など、いつの時代の王侯貴族?てな麻薬王のエピソードも印象的。300ページの小説だけど、とにかくいろいろ詰め込み攻めていて、色んな意味で深い作品。ダブリン文学賞ほか世界で好評なのも納得。 2021/08/06
やいっち
16
コロンビアの激烈だった麻薬戦争に絡む小説。コロンビアというと、麻薬マフィアの横行する社会、敵対する者や組織は容赦なく暗殺するなど倒していく。味方する民衆には優しいのだが。そんな混沌の社会を、マルケスらの魔術的リアリズムで描くのではなく、独特の設定で丹念に丁寧に描いていく。好印象を受ける小説ではあるが、マルケスファンの小生には、コロンビアの闇を描くには物足りないと感じてしまった。小生は、ちょっと発想が古いのかもしれないなー。2016/07/09
みみみんみみすてぃ
13
『コスタグアナ秘史』を一番初めに読んで、ああ大好きだ!と思った僕が期待して読んだこれは、正直めちゃくちゃ面白いとは思わなかったです。村上春樹のような青春と苦さがある感じかな? 第一章がほとんど全てで、あとは話が収まるところに収まっていくと言う感じでした。でもホント書きっぷりがうまい。緊張感がずっと漂い、どんどん読ませられる。濃密という感じ。マルケスを愛しきっている気がします。三冊目も刊行間近とのこと。すっかりバスケスファンです!2016/10/07
geromichi
8
コロンビアの麻薬戦争を題材に書かれた小説。ガルシア・マルケスの『誘拐の知らせ』を読んだ後だったため、麻薬王パブロ・エスコバルやその所有地ナポリ庭園について前情報があり、より楽しめた気がする。ラテンアメリカとアメリカ合衆国との捻れた関係性について考えさせられる。2024/08/31