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内容説明
「これでお話はおしまい」?祖父から孫へ、そしてその孫へと、語り継がれた一族の/家族の物語。その「終わり」に立ちあったのは、幼いひとりの男の子だった―
著者等紹介
ペーテル,ナーダシュ[ペーテル,ナーダシュ] [P´eter,N´adas]
1942‐。ブダペストのユダヤ系家庭に生まれるが、父親の考えのもとキリスト教の洗礼を受ける。早くに両親を亡くし、若いころからフォトジャーナリストとして働き始め、編集の仕事を経て創作の道に進んだ。『ある一族の物語の終わり』(1977)で文名を高め、その後10年の歳月をかけて著した大作『回想の書』(1986)で国際的な評価を確立。しかし共産政権時代には反体制作家として秘密警察の監視下に置かれ、作品の出版や自由な出国もままならなかった
早稲田みか[ワセダミカ]
国際基督教大学卒業、一橋大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。現在、大阪大学大学院言語文化研究科教授。専攻はハンガリー語学
簗瀬さやか[ヤナセサヤカ]
大阪外国語大学卒業、同大学大学院言語社会研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学外国語学部非常勤講師。ハンガリー文学の翻訳・紹介に取り組んでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hiroizm
32
スウェーデンの新聞によると近年ノーベル文学賞候補に上がり、最新作も好評で気になって読書。子供が語り手で読点も段落も少なめで文がやたら長く、時制もズレてるし話は飛ぶし読むのはかなり苦労した。でも読んでいるうちに少年の祖父が語る、ローマ・ギリシャ時代の神話や古典文学、旧約聖書、新約聖書、様々な歴史的事件など適当にミックスされた奇妙な一族の物語がおもしろくなってきた。夫の祖父につれないケチな祖母も息子は溺愛してるなど、いろいろ小技もあって、これいいんじゃない!と思った。他の人気作品や最近の作品も読んでみたい。2023/08/11
em
16
戦後共産主義体制下のハンガリーが舞台。主人公が少年なうえ、入れ子によって意図的に把握を困難にしているようで、この時代の大人達が生きる世界の不気味さが際立つ。祖父の語る一族の物語はモーセの時代のイスラエルから始まり、ローマ、ヒスパニア、ルーアン、ブダ、コンスタンチノープル…とまさに転々と放浪するユダヤの歴史。昔話の体裁でぼやかされているけれど、何処何処は燃え、ユダヤ教会も焼かれた、次に向かった地は…という繰り返しに、各地の歴史とそこでのユダヤ人の扱い、今まで読んだものが一気に思い返されるようでした。2017/10/13
きゅー
16
1950年代前半の共産主義政権下のハンガリー。語り手の少年シモンは祖父母と暮らしている。祖父は代々受け継がれてきたユダヤ人の物語を孫に聞かせ、一族の物語が今後も末永く語られることを望んでいる。形式的には、語り手による描写、祖父の語り、祖父の語りの中の祖先の語りと、何重にも入れ子になった物語が、改行やカッコ書きされることなく綴られるため、非常に読みにくい。そして内容を見ると、伝統的なユダヤ教の物語と、共産主義体制下での非宗教的な現実がお互いを侵食しようとしている。2017/10/03
刳森伸一
8
共産党政権下のハンガリーを舞台にした一家の歴史と圧政とユダヤ人としてのアイデンティティの物語。語り手が年端もいかない子供であるため、一貫性の語りになっておらず、さらには一章が一段落で語られるなど中々読みづらいが、これがどうしてか面白い。2019/04/19
うさぎさん
6
全く分からなかった前回とは異なり、時間空間の無秩序さもどこの話について描かれているのか理解でき、比較的面白く読めた。しかし、結局何がテーマで何に力点が置かれているのかは分からず。子どもの語りの形をとりながらも、確信犯的に無秩序に、しかし理路整然と描かれた眼前の世界のありようのギャップがどこか気持ち悪く、著者の意図が読めない君の悪い作品でもあった。2016/05/27