内容説明
「図書館の自由に関する宣言」や「図書館員の倫理綱領」といった文書の成立過程や社会との関係を実証的に明らかにしながら、戦後の図書館界における権利保障の思想の展開を精緻に跡づける。図書館と社会との関係性という、従来の戦後図書館史研究が扱ってこなかった主題を前景化した、新たな図書館史記述の試み。
目次
第1章 図書館の倫理的価値としての「知る自由」の成立(時代背景と「中立」および「自由」;破防法と図書館の中立性に関する議論 ほか)
第2章 図書館問題研究会と権利保障の思想の展開(図書館問題研究会の結成と展開;教育法学における教育権論争と「学習権」 ほか)
第3章 「図書館の自由に関する宣言」の改訂と法学的「知る権利」論の受容(「図書館の自由に関する宣言」の改訂;法学的「知る権利」論の展開 ほか)
第4章 「図書館員の倫理綱領」における志向性(「図書館員の倫理綱領」の採択;「図書館員の倫理綱領」と権利保障の思想 ほか)
第5章 権利保障の思想と判例法との接近(「公の施設」としての公立図書館;「公的な場」としての公立図書館 ほか)
著者等紹介
福井佑介[フクイユウスケ]
2015年京都大学大学院教育学研究科助教(図書館情報学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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caliculus
1
「図書館の自由に関する宣言」や「図書館員の倫理綱領」など、それらが制定された過程を遡りながら図書館にまつわる権利保障の思想の展開を見ていく本です。「宣言」などの成立過程を詳しく知らない人にはそれだけで読む価値があると思います。法学的な知見を含む図書館史的アプローチがウリで、特に今まで殆ど議論の俎上に上がってこなかった倫理綱領が扱われていることが注目点でしょうか。当時の関係者の思想を巡るという立ち位置は難しいと思いますが、非常にユニークな考察ばかりでとても勉強になりました。面白かったです。2016/04/21
doctor bessy
0
図書館界が自ら課した倫理的価値である「知る権利」の成立過程や現在における法的保障についての考察。戦後史あるいは「知る自由」に関する資料にもなり得るほどに多角的な視点で、さまざまな資料を収集し検討が加えられている。この分野の考察が2010年代まで無かったというのも、興味深い。2023/08/29