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内容説明
ボヘミア地方ヌィンブルクのビール醸造所を舞台に、建国間もないチェコスロヴァキアの「新しい」生活を、一読したら忘れられない魅力的な登場人物たちに託していきいきと描き出す。「ビール醸造所で育った」作家が自身の母親を語り手に設定して書き上げた意欲作。
著者等紹介
フラバル,ボフミル[フラバル,ボフミル] [Hrabal,Bohumil]
1914‐1997。二十世紀後半のチェコ文学を代表する作家。モラヴィア地方の町ブルノに生まれ、ビール醸造所で幼少期を過ごす。プラハ・カレル大学修了後、いくつもの職業を転々としつつ創作を続けていた。1963年、短編集『水底の小さな真珠』でデビュー、高い評価を得る。その後も、躍動感あふれる語りが特徴的な作品群で、当代随一の作家と評された。1968年の「チェコ事件」以降は国内での作品発表を制限されたが、旺盛に創作活動を続けていた
阿部賢一[アベケンイチ]
1972年東京生まれ。東京外国語大学卒業。カレル大学、パリ第4大学留学を経て、東京外国語大学大学院博士後期課程修了。現在、立教大学文学部准教授。専門は、中欧文化論、比較文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
79
『わたしは英国王に給仕した』ですっかりはまったフラバル。舞台は1920年代のボヘミア地方の小さな町ヌィンブルク。マリシュカとフランツィンの結婚生活を中心に、フランツィンの兄ペピン、ビール醸造所の人たちとの日常風景をユーモアたっぷりに描いている。ランプの芯に火を灯す夜の数分間が好きでたまらないというマリシュカ。ブロンドの髪を風に煽られながら醸造所の煙突を登ったり、「ジョゼフィン・ベイカーくらい短くしてほしいの」と髪を切り落として自転車のペダルを漕ぐ姿に、古き時代のノスタルジアと新しい時代の到来が重なる。2016/02/29
zirou1984
48
まるでミシェル・ゴンドリーがアメリを撮ったような、言葉の隅々から溢れ出す美しさと多幸感。冒頭の豚さんを解体してほやほやのソーセージを作るところから、生の肯定感に満ちたカラフルな世界が躍動している。オーストリア帝国から解放後、つかの間の独立を手に入れたチェコの片田舎にあるビール醸造所での日常は、天真爛漫でビール色の美しい髪を持つマリシュカとその周囲の人々を祝福しているかのように、笑顔にならずにはいられないエピソードに満ちている。読書でこんなにも幸福を感じられたのはいつ以来だろう。やはりフラバルは最高だ。2016/06/16
seacalf
31
舶来小説が好きな方は四の五の言わずに読まれるといい。幸福に包まれた読書になること請け合い。地味な装丁内に隠された素晴らしい文章に、すぐさまとりこになる。ようやく今年に入って「当たり」の本に出会えた。ランプ、ビール工場内の風景、風との戯れ・・・とにかく描写が美しい。天真爛漫な語り手が幸せな情景をたっぷり描き出している。馴染みのない東欧の田舎の話であるのに、マリシュカが身近な物事を喜びの対象として生き生きと映し出してくれることで、我々の暮らしの中にも沢山の素晴らしく美しいものがあると気付かせてもくれる。2017/04/04
かわうそ
31
新しい幕開けを迎える時代の光と影を描きつつ、全体的には明るくさわやかなフラバルさん。ビールを飲み肉を喰らい美しい髪を颯爽となびかせて自転車で疾走する主人公の姿を追うだけで楽しくなってくる。映画化されてるみたいだけど見るすべはあるのだろうか…2014/11/03
ネムル
20
既訳のフラバルの中で最も陽性な作品で、一番笑かされた。血と肉(豚肉ソーセージ)とビールのメルヘン。豚をかっさばいてゲラゲラ笑い、ビールも瓶から直接ぐいぐい呑む様が、あたかも聖なる儀式のよう。マリシュカが長く美しいブロンドが風になびかせて煙突に登るところなんて、全然違うのを承知でラプンツェルを思い出しもする、名シーン。「プルゼンのビールは奥さんの髪と同じ色をしていますよ。敬意の証として、奥さんの髪を飲み続けさせていただきます」2014/07/18