内容説明
未来を見つめて、いまを直視できない私たちへ。現実は、とても残酷だ。でも現実は、とっても美しい。
目次
コロナ以後と未来予期
死が傍らにある村
ナルホイヤの思想
計画と漂泊
モラルとしてのナルホイヤ
偶然と調和
死んだ動物の眼
著者等紹介
角幡唯介[カクハタユウスケ]
1976(昭和51)年北海道生まれ。早稲田大学卒業。同大探検部OB。新聞記者を経て探検家・作家に。チベット奥地にあるツアンポー峡谷を探検した記録『空白の五マイル』で開高健ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞。その後、北極で全滅した英国フランクリン探検隊の足跡を追った『アグルーカの行方』や、行方不明になった沖縄のマグロ漁船を追った『漂流』など、自身の冒険旅行と取材調査を融合した作品を発表する。2018年には、太陽が昇らない北極の極夜を探検した『極夜行』でヤフーニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞、大佛次郎賞を受賞し話題となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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マリリン
49
各章のタイトルも魅力的。「コロナ以降と未来予期」は発想に納得。人類が狼を飼いならし犬に進化し、長い時を経て相棒として傍に...犬と人間の深いつながり感じ、自殺率が高いイヌイットの根底にあるものに触れた感をもった「死が傍らにある村」。ナルホイヤ(わからない)を連発する文化から、曖昧な言葉に自然を生きる知恵と文化を感じた「ナルホイヤの思想」。太陽と闇の関係が独特なこの地の諦念の哲学が深い「モラルとしてのナルホイヤ」狩猟への姿勢と海豹の生態が興味を惹く「偶然と調和」等。非日常世界に触れる心地よさを感じた。 2022/01/06
みき
33
私は角幡唯介さんのファンである。何をやってるか分からないし、冒険家を自称したり極地旅行者と変わったり狩人になったり……この人は40代中盤になっても迷いに迷っているのだ。羨ましい。北極近くの街に年間300万近くの維持費をかけて犬ぞり用の犬を15頭ほど飼い、極地を旅歩く。深淵なことを言っているように見えるが多分そんなことはない。そんな角幡唯介さんの新刊。面白くないわけがない。今回も最高でした2022/06/14
no.ma
23
極夜の探検や、日高山脈地図なし登山を行う著者は、他の探検家の思考とは違う。どこかに到達することを至上なものとするのではなく、今不意におきる偶然に積極的に身をさらし、それに組みこまれることで、つねに自己変容するような旅、漂泊を信条とする。狩猟で旅すれば、その時点で漂泊となるという。イヌイットと縄文人と修行僧を足したような人だ。私も<今目の前>の現実に生きることには賛同するけれど、狩猟で旅する発想は起こらないし、ましてや発酵した生鳥を食べることもできない。こんど知らない街をスマホなしで散策してみようかな。2022/02/13
イトノコ
21
図書館本。「極夜行」を終えてもグリーンランドに通い詰める著者が、現地のイヌイットと現代人の思考の違いについて綴ったエッセイ。/まず、著者が次のライフワークに北極圏での漂泊の旅を据えているとは知らなかった。次の著書も楽しみだ。で、本作は現地の「ナルホイヤ=わからない」的思考についての考察だ。つまり、現代人は未来を過去とひと続きの確定したものとして予測・計画を立てて生きるが、イヌイットはそれを「わからない」と切り捨てる。真の現実とは不確定なものであり、その中で目の前の事象に取り組むのが生きる事であると。2022/07/10
まいぽん
19
この人の相変わらずさ?が読んでて嬉しくなってくる。グリーンランドで活動する角幡氏はカナダとの海峡が凍るのを待って、世界最北の土地に渡り海峡の両側を探検しまくって、その広大な土地を自分の裏庭化しよう、るん♪みたいな途方もない計画を立てていた。このところの温暖化で凍らないことが増えていた海峡が早めに凍った2020年冬、眠れないほど興奮して立てた計画が無念の頓挫…コロナでカナダ政府からの入国許可が取り消されたからであった。それでこの本では主に角幡氏の活動するシオラパルクでの生活と思索が綴られている。続く。2023/08/31