内容説明
カトリック教会禁断のテーマである「性」の問題に、従来の男性中心の視点とはまったく違った角度で、真っ向うから取り組み切り込んで、’90年ドイツで刊行と同時に、西欧世界に大きな衝撃を与えた話題の力作。著者は世界初の女性カトリック神学教授。
目次
性ペシミズムの非キリスト教的起源
古代の月経タブーとキリスト教的継承
新約聖書の誤解―処女懐胎、独身制、再婚
アウグスティヌス以前の教父たち
古代における家族計画―嬰児殺し、堕胎、避妊
アウグスティヌス
独身制の展開
女性に対する独身者たちの恐れ
独身者の女性抑圧
平信徒の修道士化〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
owlsoul
1
女性として世界ではじめてカトリック神学教授に就いた著者が、カトリック教会の性に対する取扱いについて批判的に論じた著書。ストア派やグノーシス派の思想が蔓延していた当時の世相、聖典の誤訳、そして男性視点のみで作られた規範。様々な影響によって、カトリック教会は人間の性に対して極めて敵視的な組織となった。セックスは悪魔の領域とされ、(男性の)肉欲を誘発する女性は下劣なものとされた。世界を「人間らしく」設計することはとても難しい。エビデンスのみでも、思弁のみでも、何かが失われ何かが暴走する。やはり理想郷は遠い。 2021/12/05
くまこ
1
例えば、『ヤコブの原福音書』から、サロメがマリアの腟に触指検査を行なったという記述が引用される。その出産時の無傷性から、マリアの処女性が証明されるという伝統的な解釈を説明した上で、著者は自らの見解を冷静に述べている。取り上げられたテーマの深淵さと、紹介される膨大な資料。そして何より、著者の揺るぎない論述スタイルに圧倒された。2012/08/25