内容説明
1500万ユダヤ人の9割を占める東欧系ユダヤ人は、『聖書』の民、セム系・ユダヤ人ではなかった。『ホロン革命』のケストラーが自らのルーツを探り、世界のタブー=ユダヤ人問題に挑戦。
目次
訳者序文 真のユダヤ理解が国際化の鍵
第1部 カザール王国の興隆と没落(南ロシア草原における興隆;ユダヤ教への改宗;ロシアの台頭による衰退;首都陥落にひき続く没落)
第2部 カザール・ユダヤの歴史的遺産(カザールの故地を離れて東ヨーロッパへ;カザール・ユダヤ人と「真のユダヤ人」;交錯する流れを貫くカザールの血;ユダヤ人神話とその人種的多様性)
付録 イスラエルとディアスポラ―歴史は歴史として
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
197
中央アジアのカザール国の盛衰。ユダヤ人の多くがセム系ではなくカザール系だと知り驚く。カザールはアラブの侵攻から西洋を守る砦のような国だった。回教国と基督教国の間で独立を保つためユダヤ教を選んだ。国際色豊かで寛容なこの国にはユダヤ人が移住し、様々な技術やヘブライ文字をもたらした。その文字で綴られたカザール王ヨセフの書簡は、ノアの第三子ヤペテからの系図を示し創世記と自らの民族を結びつけている。中世の旅行記に残された遊牧民やバイキングの記事、またロシア、ビザンチン、イスラムを交えた戦史や宗教史に興味が尽きない。2021/11/14
perLod(ピリオド)🇷🇺🇨🇳🇮🇷🇵🇸🇾🇪🇱🇧🇨🇺
6
原著は1976年、邦訳は1990年。作家として名の知られたケストラーはハンガリーのユダヤ人で、自らのルーツについて書いた本。『ユダヤ人の起源』はこれよりも10年以上後で歴史学者のシェロモー・サンドが書いた物なのでどちらも読むといい本。あちらはネイション論から旧約聖書とイスラエルの考古学が大前提で、こちらはカザール帝国の実態についてより詳しく書かれている。なおそのサンド教授へジャーナリストの川上泰徳氏による2010年のインタヴュー。「私(サンド)よりもハマスの方が原ユダヤ人に近い」→2024/01/29
ヴェルナーの日記
5
ユダヤ民族のルーツを辿れば12支族に収まるとされているが、著者ケストラーは13支族めが居たとする。それはカザール王国であり、凡そカスピ海の北にあって最盛期にはビザンチン帝国も凌駕するほどだった。そのカザール王国がユダヤ教を国教とした(この時代は国王が選んだ宗教が国教とされた)。つまり非ユダヤ民族によるユダヤ教国家が誕生したのである。なぜカザールはユダヤ教を国教としたのか?そして、その後カザール王国はどうなったのか?などを推察しつつ、ユダヤ民族とは?という究極の問い掛けを歴史書等の文献から考察した一書だ。2013/06/04
aya-ayu
3
若干読みにくいが非常に重要なことが書いてある。 現代の「ユダヤ人」のほぼ9割は、我々が旧約聖書から普通にイメージするところのユダヤ人ではなく、イスラム教とキリスト教のどちらにもつかないためという政治的な理由により8世紀頃ユダヤ教に改宗したカザール人の末裔であるという説、及びその論証。但しこれは奇説でもなんでもなく、我々日本人が知らないだけで世界の常識なのだそうだ。カザールという国は高校の世界史にはほとんど出てこないね。学校では教わらない歴史です。 2014/06/28
yurari
1
ユダヤ人とは誰なのか、私の頭の中でこんがらがってしまい、余計に分からなくなってしまった… 時間をおいてまた読んでみよう。2013/08/11