内容説明
『ロティの結婚』、『お菊さん』。異国情緒に彩られた恋物語で一世を風靡したピエルロティ。しかしその作品には虚構がない。物語さえ存在しない。過ぎ去ってゆくエグゾティスムの作家というレッテルを剥がし取り、過度に成熟した19世紀末ヨーロッパの虚無と倦怠に深く冒されながら、そこから癒えようと異国を旅し、執筆し続けたひとりの男の生のありようを浮かび上がらせる。
目次
第1章 ピエル・ロティ館
第2章 エグゾティスムという病い
第3章 民族学の先駆者
第4章 自伝作家としてのロティ
第5章 ロティのタヒチ・ゴーギャンのタヒチ
第6章 ロティとルーセル
第7章 宗教なき宗教的魂
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
dilettante_k
2
00年著。19世紀フランスで一世を風靡し、アカデミー会員まで上り詰めた作家ピエル・ロティ。その死後、「白痴」(ブルトン)、「二流作家」(バルト、サイード)と切り捨てられた作家が残したのは、南方へのエグゾティスムと少年期の憧憬が入り混じる奇妙な館だった。著者は、ロティ作品の筋よりも、海軍士官として世界中を巡った体験に根ざした描写や、異文化が混淆した館の構成に着目し、作家の「民族学者」、「ルポライター」としての側面を強調。後年の反西欧的アヴァンギャルドの先駆者と捉え直す。読書よりも海を愛した異色作家の伝記。2014/12/21
netakiri nekotaro
1
「エグゾティスムは、ロティにとって、癒えることのない病いだったのである。」