内容説明
昭和天皇への痛烈な呪詛と共に壮烈な諌死を遂げた三島由紀夫の行動哲学の論理と倫理を詳細な作品分析と行動の検証から解明し、現代のアポリア=テロルの秘鑰に迫る刺激的労作。
目次
序章 テロル・サヴィンコフ・三島
第1章 現人神天皇再生への願い
第2章 三島と「現人神」の天皇
第3章 政治の季節と三島
第4章 テロルの倫理
第5章 行動の帰結
著者等紹介
キムラ・スティーブン,千種[キムラスティーブン,チグサ][Kimura‐Steven,Chigusa]
京都女子大学短期大学部英文科卒。オックスフォード大学(英国)留学。ブリティッシュ・コンロビア大学(カナダ)修士号。カンタベリー大学(ニュージーランド)博士号。現在同大学スクール・オブ・ランゲッジ・アンド・カルチャー日本語プログラム教授
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感想・レビュー
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Miss.W.Shadow
4
「なぜテロをした」と問われれば「カッコ良かったから」とでも答えそうな三島。兵役を失格となったために兵士としての戦争を直接体験せず、ただ戦時下の教育に忠実な優等生として価値観を醸成した彼は、結果として遅れてきた国粋主義者であり、梅原猛、ヘンリー・スコット・ストークスら当時の知己達・論壇からも異端視されていたことが伺える。教育勅語が西洋におけるバイブルの教育をモデルにしていたという事が、彼が現人神たる天皇にカトリックにおける神に近い機能を求める事につながったという考察は面白かった。景行天皇/倭建命から2011/09/09
司書見習い
2
三島由紀夫はなぜ切腹を行ったのか、彼の生い立ちとその先に生まれた思想を考察した本。恥ずかしながら、三島の作品はまだあまり読めていないので、2・26事件の犯人に対して同調していたとは知らなかった。本書は、三島の歴史観には批判的。結局は三島が受けた教育、戦争で直接的な被害をほとんど受けなかったことが彼の行動を支配していた、というのが結論。「こっちは天皇のお気持ちを斟酌する必要はない」(196p)「美しい行為ならばテロリズムは承認します」(267p)と、なかなか独特な考えの持ち主だったらしい。2019/01/31
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