出版社内容情報
母なる神=観音の浄土を求めて。現世の災厄を逃れて、また衆生の救済を求めて帰らぬ旅に出た者たちがいた。那智勝浦から中国舟山列島、さらに韓国・インドの古跡を訪ね、歴史に潜む民衆の悲嘆の夢を探る。
内容説明
補陀落は観世音菩薩の治める浄土。現世の災厄を逃れて、また衆生の救済を求めて帰らぬ旅に出た者達がいた。那智勝浦から中国舟山列島、さらに韓国・インドの古跡を訪ね、歴史に潜む民衆の悲嘆の夢を探る。
目次
第1章 入水の海(補陀落渡海と宣教師;那智の渚で)
第2章 観音のいる岬(足摺岬の龍灯;唐渡りの僧と龍になった女)
第3章 をなり神・媽祖・シヴァ神(ホタラ島幻想;観音浄土の島;天竺へ)
第4章 観音変化相(江戸の観音・浪速の観音;悲母観音の来た道)
第5章 近代文学と観音信仰(摩耶とマリア;母観世音菩薩)
著者等紹介
川村湊[カワムラミナト]
1951年、北海道生まれ。1982~86年、韓国釜山の東亜大学で日本語・日本文学を教える。現在、法政大学国際文化学部教授。文芸評論家
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感想・レビュー
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佐倉
10
補陀落渡海についての話は一章まで。基本的にポータラカの主とされる観音についての信仰…それも東アジアにおいて女神やシャーマンと習合した『神』としての…を描く。学術というより文学、現地を旅してのエッセイの趣が多い。補陀落渡海について今後も調べて行きたいが、姥棄や特攻のような悲壮感に溢れた自殺儀式として理解するのではなく、当人からするともっとあっさりして爽やかですらある死の論理が中世にはあったのではないか…という意見は頭に留めておいても良いかもしれない。2023/01/10
カツ
4
補陀落渡海の話を読みたかったのだがメインは観音信仰の話だった。それでも、台湾の廟でよく見る媽祖やキリスト教のマリヤ様・ヒンズー教のシバ神と観世音菩薩との繋がりなどが分かったりして面白い。千手・千眼・十一面や馬頭などの変化観音はシバ神がルーツだというのも興味深かった。2020/07/05
T F
3
補陀落(ふだらく)とは、観音菩薩が住むといわれるポータラカ山が転じたもの。観音信仰は、東アジア一帯に広がる。日本でも坂東、西国、秩父と有名な観音霊場がある。100観音めぐった後は、中国、韓国の観音霊場にも行ってみたい。2019/10/30
青沼ガラシャ
2
キリスト教宣教師が書き残した壮絶な集団自殺というべき補陀落渡海の様子が凄まじい。この本自体は観音信仰がメインだが、後半、キリスト教と習合したマリア観音信仰を経て、自力救済を高らかに歌い上げる岡本かの子の「女人われこそ観世音ぼさつ」の詩に至り、冒頭の補陀落渡海にリンクしていく構成が見事。なるほど名著。川村湊さんの本は他にも読んでみたい。2024/02/11